研究課題/領域番号 |
24320007
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
御子柴 善之 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20339625)
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研究分担者 |
寺田 俊郎 上智大学, 文学部, 教授 (00339574)
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20379217)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流、ドイツ / 人権 / カント / 世界市民 / グローバル化 / 法と道徳 / 人間の尊厳 |
研究実績の概要 |
2014年度、本研究の中心課題は、日本で第8回日独倫理学コロキウムを開催することである。この課題は、複数の準備会を経て、2014年9月23日、早稲田大学戸山キャンパスにおいて、「人権への問い-法と道徳-」という題目の下、当該コロキウムを開催することで実現した。当日はドイツ語で発表・質疑が行われた。その発表者と題目を日本語で記す。舟場保之(大阪大学)「人権を道徳的承認で根拠づけることができるか」、マティアス・ルッツ=バッハマン(フランクフルト大学)「人間の尊厳と人権」、寺田俊郎(上智大学)「法と道徳-人権の観点から」、御子柴善之(早稲田大学)「適法性と道徳性-人権の観点から」、アンドレアス・ニーダーベルガー(デュースブルク=エッセン大学)「人権と道徳を新たに査定する」。以上の発表者に加えて、多くの大学から研究者が集まり、総勢25名ほどの研究会となった。日本の若手研究者にドイツ語での議論に参加する場を提供できたことを、このコロキウムの実績の一部と見なしてよいだろう。 今回は、昨年度の第7回コロキウムにおける議論を引き継ぐかたちで、「人権」の根拠づけに道徳、特に「人間の尊厳」概念が使えるかどうかが議論の中心となった。もとより、この議論に決着があるわけではないが、複数の視点を共有できたことは実績と見なしてよい。 なお、コロキウムに先んじて、第7回コロキウムの原稿集を冊子にまとめ、今回のコロキウム参加者に配布することができた。また、本研究の代表者と分担者を中心として、次の訳書を刊行した。ブルンクホルスト他編、舟場保之・御子柴善之監訳『人権への権利-人権、民主主義そして国際政治』大阪大学出版会、2015年1月。この訳書の刊行もまた、本研究の当初より計画したことであり、今年度の研究実績である。また、コロキウムと前後して、本研究の成果を書籍化することについて合意を形成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、2014年度まで毎年一回、日独倫理学コロキウムを開催することができている。また、2013年度に予定されていたものの2014年度に変更した日本での同コロキウムの開催も実現することができた。この研究会において、研究代表者や分担者のみならず、日本の若手研究者ともドイツの研究者と新たな共同研究を行う可能性が開けた。なお、今年度のコロキウムではドイツ人研究者を三名招聘する予定だったが、先方の健康上の理由で二名に留まったことは残念である。 また、本研究が同時に進行させてきた翻訳が、ブルンクホルスト他編、舟場保之・御子柴善之監訳『人権への権利-人権、民主主義そして国際政治』として大阪大学出版会から2015年1月に刊行された。 さらに、これまでの三回のコロキウムを経て、日本で本研究内容を書籍化する準備も整いつつある。そこで、ドイツ人研究者の原稿の翻訳作業をすでに開始し、日本人研究者は自分の研究を日本語の論文にまとめ直すことで合意している。書籍としての刊行は2016年度から2017年度を予定している。 本研究の議論においては、法と道徳を峻別すべきか、あるいは人権を「人間の尊厳」で根拠づけることができるか、という論点が中心的に論じられている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は第9回コロキウムを、「道徳・法・政治の関係-カントを起点として考える」というテーマの下、ドイツ連邦共和国で開催する。今回は発表者数を増やし、一日ではなく一日半かけて、一日目(9月9日)はボンで、二日目(9月11日)はエッセンで開催する。エッセンでの開催には、同大学教授、アンドレアス・ニーダーベルガー氏にご協力いただく。当日より前に、研究代表者と分担者は日本で準備会を開催し、ドイツではコロキウムの前後に出版のための打ち合わせをドイツ人研究者も交えて行う。コロキウムの後、研究代表者・分担者は研究成果出版のための準備を行い、2016年度から2017年度の刊行を目指す。 今回のコロキウムのテーマに「政治」が含まれることによって、「人権」問題の実際がさらにクローズアップされることになるだろう。カントが『永遠平和のために』で政治を「実地の法学」と読んだことを一つの参照枠として、グローバル化した世界において「人権」の毀損されない社会を構想するために必要な政治的手続きが論じられなくてはならない。このとき、政治の実行にとって道徳がどのような意味を持つかが再度、問われることになるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の内容を書籍化するための翻訳原稿について、翻訳の依頼は行ったものの、翻訳完成が2015年度なので、そのための代金(謝金)を未執行であるのが一つの理由である。 また、第8回日独倫理学コロキウムを開催するにあたり、さまざまな人件費が発生することを予想したが、研究代表者と研究分担者の努力によってそうした代金を執行することなく済ませることができたことも一つの理由である。 さらに、当該コロキウムにおいては、発表者も多くの聴衆もドイツ語を解するので、日本語訳を一切作成しなかったがゆえに、そのための通訳・翻訳料が発生しなかったことも一因である。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度、ドイツ連邦共和国で開催する第9回日独倫理学コロキウムは、ボンにおける開催(一日)のみならずエッセンにおける開催(半日)を予定している。したがって、コロキウムのための滞在日数も増えることが予想され、「次年度使用額」を部分的にそのために費消することになる。 また、2016年度から17年度に刊行予定の書籍(本研究の成果)のために現在依頼中の翻訳にかんして、今年度に謝金を支払う。そのためにも「次年度使用額」を部分的にそのために費消することになる。
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