研究課題/領域番号 |
24320008
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
三好 博之 京都産業大学, 理学部, 教授 (60286135)
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研究分担者 |
小澤 正直 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (40126313)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
中原 幹夫 近畿大学, 理工学部, 教授 (90189019)
小嶋 泉 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (60150322)
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計算の哲学 / 量子論の基礎 / 不確定性原理 / ミクロ-マクロ双対性 / 偶然性 / 圏論 / 科学の科学 / 力学的不変量 |
研究概要 |
小澤はハイゼンベルク不確定性原理の破れおよび小澤の不等式の成立を光学的偏光測定で観測するための理論を構築した。戸田山は自然計算するシステムの物質レベルからの進化の帰結として科学の発生を捉えるためのリサーチプログラム(「科学の科学」)の青写真を、カントが純粋理性批判で行った議論を、自然化・歴史化・社会化することで構想した。中原は研究協力者のYidun Wan博士および大学院生と量子系の時間発展のもとで不変に保たれる「力学的不変量」を利用して,断熱時間発展を超える量子制御の研究を行った。特に今年度は4準位系の制御を,Lie代数su(4)を使って分類した。小嶋は,複数の「慣性系=参照基準系」を一度に導入し,その相互関係を統制することで,対象系のintrinsicな性質を明らかにするのが「相対性理論」の本質だが,一つの対象系が持ち得る=複数の動力学の相互関係を統制することによって,局所ゲージ不変性やくりこみ,熱力学的性質の本質に迫れることを見出した。檜垣は,今年度は自分に関わりのあるフランス現代思想、身体論、認識論という観点や、そこでの偶然性や現実性という様相に関わる部分から、当該科研に連関する研究をおこなった。郡司は動的な双対性と思弁的実在論の関係を構想し,研究発表を行った。三好はAbramsky-Coeckeの量子論の圏論的な定式化とJacobsの圏論的量子論理との関係について小澤の測定理論を組み込むことを念頭に計算的観点から研究を行った。矢田部は矛盾許容論理の計算的な性質について研究を行った。また研究協力者の細谷は弱値の数学定式化を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各分担者の研究は概ね順調に進んでいる。しかしそれらを踏まえた,特に哲学的な議論については,まだ十分に行われているとは言い難い。ただ初年度であることも踏まえると,とりあえずは予定から大きくは遅れていないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はプロジェクトの前半では引き続き,物理学に重点を置きつつ個別の科学に現れる(広義の)計算について検討を重ねてゆく。プロジェクトの後半ではそのような具体的な実例に裏付けられた計算の哲学的考察に回帰する。 一方で記述科学とは対照的な理解の手段を求めるために,音楽についての実践的かつ実験的な試みも継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度についてはプロジェクトの前半ということで,引き続き本年度と同様に代表者・分担者・協力者の個別の研究活動を中心とするが,プロジェクト全体を俯瞰するためのワークショップを行う予定である。なお,平成24年度の繰越金については,群司が平成25年夏に西表島に棲息するミナミコメツキガニの生態調査の予算に充てる予定である。郡司はこの生態調査によって,新たな計算概念の拡張を構想している。
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