研究概要 |
クムトラ第75窟の題記と壁画の画像処理の結果をふまえてその内容を再検討する発表(講演)を9月にイェール大学,ハーバード大学で,12月にはムンバイのソーマイヤ大学で行った.本石窟の題記は退色のため現状では殆ど判読できず,そのため先行研究でもその内容に関しては種々の推論がめぐらされているのが現状であるが,今回画像処理の結果をふまえることによりかなり確度の高い理解が提示できたように思う.ソーマイヤ大学での学会終了後には,カーンヘーリー石窟・アジャンター石窟・エローラ石窟での見学および撮影(可視光)を行い,今後のインド石窟研究のための見通しを得ることができた. 3月のパリ出張では,ギメ美術館で同館長の許可のもと同館所蔵の観経変相二点に対する可視光・赤外線撮影を行い,特別な照明器具は使用しなかったものの,新規に購入した高性能のデジタルバックによりかなり良好な結果を得ることができた.またフランス国立図書館では,文字とスケッチが重なって判読し難い観経変相の画稿の原本一点を詳細に観察して,画稿の原型を復原するための有益な観察の機会を得たさらにルーブル美術館で美術品の撮影技法に関する多数の資料を収集したほか,担当者と今後の研究遂行に関する協議を行い,セルニュスキ博物館でも今後の研究協力に関する打合せを行った.この出張では現地当局の協力のもと,期間内に希望していた調査をほぼすべて順調に終えることができた.
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