研究課題/領域番号 |
24320026
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉 武夫 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40168274)
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研究分担者 |
長岡 龍作 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70189108)
海野 啓之 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (80587759)
シュワルツ アレナレスロール お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (20377013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 美術史 / 仏教学 / 弥勒 / 図像 / 浄土信仰 |
研究概要 |
24年度は、プロジェクト開始年度ということもあり、今後の計画の見通しを検討するとともに、日本国内に所在する菩薩形弥勒の遺例を調査することに費やした。そして、兜率天弥勒像ならびに菩薩形弥勒の日本に所在する関連遺品について、前回のプロジェクトを引き継いだかたちで追加調査・熟覧をすることができた。龍谷ミュージアムでは、四天王寺蔵の弥勒菩薩説法図(ガンダーラ)、泉屋博古館蔵弥勒仏立像(北魏)、東京国立博物館蔵の半蜘菩薩五尊像(北斉)、また奈良国立博物館にて興福寺蔵法相曼茶羅図(室町)、法隆寺にて法相曼茶羅図(南北朝)などの熟覧を行った。 とくに詳しい合同調査を行ったのは、(1)密蔵院蔵の兜率天曼茶羅図(南北朝)、(2)東京藝術大学美術館蔵の弥勒来迎図(鎌倉)、(3)東京国立博物館蔵の法隆寺献納宝物中の菩薩半跏像2体(159号、160号、飛鳥~奈良)の三件である。合同調査チームで愛知県ならびに東京都にて現地調査を行い、(2)では赤外線デジタルカメラによる撮影も含めて貴重な画像資料を収集することができたと考える。このうち(1)は背景に大きな多宝塔を安置する図様をもつ。ただ兜率天を描いたというのみならず、現世における仏法の永劫性を象徴する塔を浄土図のなかに挿入した可能性がある。(2)は兜率天浄土から現世に弥勒が来迎する様子を描いたもので、<浄土・現世の交通>という本プロジェクトの考察対象そのものといってよい。(3)は尊名が不明確ではあるが、両像の台座に線刻された山岳描写は、現世の須弥山である可能性が高く、菩薩そのものは須弥山の上方に居る弥勒という想定がなされているものである。以上の三件は、考察の対象としてきわめて意義があり、プロジェクトの成果とすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の当初の予定は、国内に所在する弥勒信仰関連の諸作品のうち、兜率天曼茶羅図、法相曼茶羅図、弥勒来迎図を調査するという目標があった。これらのすべてを調査できたわけではないが、ポイントとなる作品の熟覧、ならびに調査を実施することができた。さらに彫刻作例についても菩薩半助日像を調査し、全体としては順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、国内所在の作例に加えて、海外とくに中国・朝鮮半島および中央アジアの弥勒信仰関連遺品の現地調査が必要である。25年度はとくに中央アジアならびに中国北西部での調査を計画している。また国内では、鎌倉時代の弥勒菩薩像および関連する浄土曼茶羅の調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該助成金が生じた理由は、設備費として購入したデジタルマイクロスコープが予定より価格が抑えられたこと、および鎌倉時代の弥勒菩薩の彫刻作例の調査・撮影予定が、所蔵者の意向もあって翌年度以降に繰り延べになり、予算執行を一部繰越たことが主な理由である。これは25年度に当該の調査を目指している。
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