研究課題/領域番号 |
24320026
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (40168274)
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研究分担者 |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
SCHWARTZ LAURE 上智大学, 文学部, 准教授 (20377013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 美術史 / 仏教学 / 弥勒 / 浄土 / 来世 |
研究概要 |
2年目となる25年度は、8月に海外調査として中国・甘粛省および新疆ウィグル自治区クチャ周辺の弥勒信仰関係仏教史蹟の調査を行った。甘粛省炳霊寺石窟では169・172・132・126窟を調査、また甘粛省博物館では交脚弥勒菩薩と半跏思惟仏を伴う仏碑像を撮影も含めて調査することができた。クムトラ石窟では68~72・63・58・16・13・新1窟・新2窟ほかの諸窟を調査した。新疆のクチャ周辺でも石窟の地理的条件によって、中国的な弥勒信仰の影響を受けた場所と、インド・イラン的な要素が強い場所とがあるが、クムトラは前者に相当するようである。つづいて調査の主要対象であったキジル石窟を訪問し、38・77・48・17・118・186・188・186・184・新1窟などを熟覧した。兜率天上の弥勒を表す図像的な特色である交脚は、完全な交脚のほかに両足をあわせるだけの形式も存在することが確認できた。シムシム石窟では1・5・11・13・15・30~33・44・46窟など、クズルガハ石窟では14・16・27・28・30~32窟ほかを調査することができた。河西回廊からクチャ周辺のおもな仏教史蹟における弥勒信仰関係の造形的特色の概略を把握できたことは、大きな成果である。 国内での調査対象としては、根津美術館所蔵品から新出の兜率天曼荼羅を調査し、図様は鎌倉時代の延命寺本に酷似し南北朝時代ころの制作であることがわかった。また、奈良国立博物館では、同館所蔵の浄土曼荼羅図・千体地蔵像、松尾寺本阿弥陀聖衆来迎図を調査し、晩唐から宋にかけての様式的な反映が日本の浄土教絵画にみられることを確認できたことが研究成果としてあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中国の新疆ウィグル自治区の弥勒関係遺跡は、研究上もっとも必要な調査候補対象であった。中国新疆での政治的不安などの外的影響が懸念されたが、さいわい調査期間は安定しており、ほぼ当初の予定通りに石窟を熟覧し、一部は撮影もできたことは大きな進展であった。これは予想外の成果といってよい。 国内での調査対象は、一部の作品が修理中にかかっていて次年度以降にもちこされたが、新発見の根津美術館本など、予定外の作例も調査することができ、本年度は稔り多い研究遂行となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、修理中のため調査のできなかった国内所在の作品を調査するほか、東京藝術大学美術館所蔵の厨子扉絵など新たに見いだされた弥勒関係遺品も確認しながら、調査研究を進めたい。 また、中央アジアから欧米に持ち出された関連作品が存在し、その調査も予定している。26年度はフランスおよびドイツの探検隊の遺品の調査をめざしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に調査予定だった作品の一つ(海住山寺本浄土曼荼羅図)が、まだ修理中で調査ができなかったため。 次年度の前半には修理が完了予定で、調査に支障がないと予想される。未使用分はそれに宛てる。
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