研究課題
最終年度である本年は、国宝の室生寺金堂釈迦如来立像や、国指定重要文化財の京都府宮津市金剛心院如来立像、山形県寒河江市慈恩寺普賢菩薩騎象像、薬師寺地蔵菩薩立像(東京国立博物館寄託)などをはじめとする彫刻文化財の3D計測調査を実施し、これまで取得したデータも併せて、木取り(丸太から必要な寸法へ製材する工程)・木寄せ(複数材で構成された木彫像の構造設計)想定図の作成を試みた。その中でも平安時代初期の作例・金剛心院如来立像は、3Dデータの投影図による木取りの検証を行った結果、従来の先行研究にあるとおり、この時代の主な構造技法である「一木造り(頭と体の主要な部分をひとつの木材から彫り出す構造技法)」ではあったが、この像の特徴でもある前傾した姿勢に合わせ、木材も斜めに傾けて木取りを行った可能性が想定された。このことは、平安時代初期一木造りにおいても、単にひとつの木材から彫り出しているのではなく、その像の動きに合わせて木取りを行っていた可能性を示唆するものとなった。このほか初年度に計測調査を行った東大寺中性院弥勒菩薩立像(鎌倉時代初頭の作例)を3DデータとX線撮影をもとに構造解析を行ったところ、本体部分のみでもゆうに50を超すパーツで構成されていることが明らかとなった。これまで本像はその構造が複雑であることは指摘されていたが、3Dデータによる精度の高い3次元の情報を、平面的な情報である調査写真とX線撮影画像などと合わせて多角的に分析することで、「割矧ぎ(ひとつの木材を一度割り離して彫刻を進めたのち再び接合する構造技法)」などの構造と、別の木材を接合している構造を、3Dデータによる立体画像上でそれぞれ整理することが可能となった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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