研究課題/領域番号 |
24320053
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹本 幹夫 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90138181)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 番外謡曲 / 謡本 / 古典籍本文校訂 / 廃曲 / 世阿弥 / 謡曲 / 能楽 / 猿楽 |
研究実績の概要 |
これまで謡曲校訂は人気現行曲に傾きがちであったが、謡曲研究には、文学的達成度の高い作品のみならず、すそ野を形成する番外曲までも視野に入れることが必須である。また従来の謡曲校訂本文は、現行演出重視か古態本文重視かで決定を見ておらず、他の古典本文に比して、不徹底にならざるを得ない面が多くある。本研究はこれまでの謡曲本文研究の限界を打破し、能文学の新たな文学史的位置付けを可能にする研究を目指している。そのために、良質の本文提供がほとんどなされていない番外曲の翻刻を行い、合わせてモデルとなるべき校訂本文の作成を行うことを目的としている。 今年度は、番外謡曲の翻刻をサ行まで進め、サ行謡曲の9割方の翻刻を完了、誤読等のミスを訂正した。翻刻対象は次の諸曲である。 犀・西行西住・桜間・佐国・狭衣乙・佐々木・座敷論・座主流・貞任・真田・実方・志賀忠則・信貴山・敷地物狂・樒塚・樒天狗・重衡甲・重盛・獅子王・侍従重衡・実検実盛・慈童・信夫・柴田・島廻甲・十番切甲・正儀世守・上人流・浄妙坊・末の松山・鈴木・住吉小尉・住吉物狂・関原与一・千寿寺・先帝・千人伐・素拝桜・孫思バク(しんにょうに貌)。 このいっぽうで、謡曲本文の校訂のあり方について、国際研究集会や日本学術会議分科会で発表を行い、古典本文としての謡曲校訂の困難さについて論究を重ねた。すなわち、現存謡本の諸本校訂から世阿弥時代の原本へと遡及可能な諸本校訂の方法論の考察、謡曲本文校訂の限界と課題につき、数々の考察を重ねた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
翻刻作業は、本来はタ行以降をほぼ終えていなければならないはずであるが、現在ようやく半ばを越えつつある段階である。人力を要する作業が主体なのであるが、謡曲を専門とする若手研究者の数が少なく、下作業である翻刻作業に遅れが出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、専門外の大学院生でも読解力のある学生を起用するなどの方策を講じ、また自分でも下作業に加わることにより、多少なりとも作業効率の向上を図りたい。合わせて本文モデルの作成にも注力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
翻刻能力のある学生が中々集まらず、期待通りの作業の進捗を得られなかったため、人件費とこれに関わるコピー代等の費目で予算を消化できない部分が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
資料撮影のための出張の増加や人員確保などによって対処する。
|