江戸初期以前に成立した非現行謡曲(番外曲)全曲245曲を翻刻・校訂し、それを踏まえ謡曲校訂の理論を確立し、モデルとなる校訂本文を作成するのが、本研究の目的である。曲ごとに複数の写本を翻刻したため、当初の245曲に67曲及ばず、ナ行までの178曲となった。未了分は今後も翻刻作業を継続する。 この作業の過程で、謡曲本文の遡源的研究の可能性に想到した。これにより謡曲本文がどのように系統化したかのパターン分析の目安を得た。これは世阿弥自筆能本と現存謡本諸本との関係性の想定論に基づく理論であるが、世阿弥自筆本の存在しない非現行曲についても、ある程度の想定をすることが、曲ごとに可能となった。
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