研究課題/領域番号 |
24320059
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
野田 研一 立教大学, 異文化コミュニケーション研究科, 教授 (60145969)
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研究分担者 |
山里 勝己 名桜大学, 国際文化研究科, 教授 (80101450)
中川 僚子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (90192666)
結城 正美 金沢大学, 外国語教育研究センター, 教授 (50303699)
喜納 育江 琉球大学, 国際沖縄研究所, 教授 (20284945)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 交感 / 心的風景論 / 表象 / エコクリティシズム / 自然ー人間学 |
研究概要 |
研究の目的:本研究は、「自然―人間の関係学」の再構築へ向けた研究の一環として位置づけられる。自然と人間、外部世界と内部世界、フィジックスとメタフィジックス、物理界と精神界、世界と自己などの対応や相関性を指す〈交感〉(correspondence)という概念を、文学における事象=表象として再検討に付すと同時に、その概念の現在的有効性を文学以外の諸分野からのアプローチを参照することによって明らかにする。このような〈交感〉概念は19世紀ロマン主義において定式化されるに至ったが、その後の小説を含む文学表現において、いわば理論的前提として「埋め込まれる」(embedded)に至ったものである。本研究では、このような〈交感〉論を軸とする「自然―人間の関係学」を歴史的に再検討し、その現在的意義を明らかにする。 本年度研究実施計画と内容:前記の目的に即して、①表象/記述様式論、②理論/認識論、③歴史/思想論、④現代的意義、の4点からの研究を進めて2年が経過した。とくに本年度は当初の予定どおり、目標を「文学的交感の理論的・歴史的考察」として設定し、この目標と、前記①~④の視点を複合させる研究を展開した。理論的考察では、近年の文化人類学において大きな注目を浴びている人間/動物関係論、とくにperspectivism(観点主義)と呼ばれる理論を内外の関連文献を通じて検討し、そこで重視されている「観点交換」の問題が、本研究プロジェクトにおける〈交感〉論と深く交差する、もっとも現代的、現在的な問題であることが判明した。一方、歴史的考察では、ヨーロッパ文化におけるミクロ/マクロコスモスの照応理論を歴史的にたどり直すと同時に、研究会では日本古代史の専門家を招聘して、環境歴史学の文脈における〈交感〉論の可能性について助言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究の目的」の達成度を自己評価のような結果と判断する理由は、本プロジェクトの問題意識が外延的に派生・接続する異なる領域の成果を吸収する基盤が成立していることである。理論面では、とりわけ文化人類学におけるPerspectivism(観点主義)および「観点交換」の問題と、本プロジェクトにおける〈交感〉論が深く交差する可能性の発見が大きく、本プロジェクトの現代性、問題性、重要性が明らかになった。また、歴史的にも非ヨーロッパ、アジア圏におけるコスモロジーとの関係を具体的に把握しつつある。以上は、当初の予想を超えた速さと展開である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の「現在までの達成度」において触れたように、本研究課題の推進はきわめて順調であり、文化人類学や非ヨーロッパ圏における歴史学との接点など、当初の予想以上の成果を挙げつつある。本課題がとくに明らかにしたいのは歴史性と現代性の二者であるが、この二面を的確に反映する研究の方向性が2年目にして確実にえられたため、3年目はそれを土台としてさらに飛躍的に深化させ、かつてない規模の〈交感〉論としての総括的研究を進めていく。最終年度として、8月開催予定の研究会では、全体研究と個別研究それぞれの総括を行い、2月には関連文献・資料の書誌作成および報告書作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者及び分担者2名に次年度使用額が生じたが、主な理由は、いずれも予定外の繁忙が生じたため、計画していた出張や研究会への参加などができなかったことが大きく、また購入予定の機器、書籍購入の計画性に困難が生じたためである。 前年度未使用額については、個別の未使用額を個々に充当するのではなく、各分担者の意向を確認した上で、全体として再配分を行うこととした。これにより、無理のない使用計画を立てることができた。主要な使途は、国内旅費、海外調査・学会参加、機器・書籍購入、合同研究会開催、謝金、アルバイト雇用、報告書印刷費等である。
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