研究課題
基盤研究(B)
本申請による研究は、ナイル諸語の統語論を、ナイル諸語間で比較することにより、明らかにすることを目的としている。特に、統語構造では説明がつかない言語現象について、たとえば、情報構造と語順の関係や指示の問題について研究する。平成24年度は、稗田乃(研究代表者)がクマム語(西ナイル諸語)を、河内一博(研究協力者)がクプサビニ語(南ナイル諸語)を現地調査した。ハイネ、ベアント(研究協力者)とケーニヒ、クリスタ(研究協力者)は、ドイツの研究補助金を獲得して、アギエ語(南ナイル諸語)を調査した。得られた成果としては、たとえば、クマム語にはすくなくとも2つのタイプの焦点構造(Unmarked focusとContrastive focus)をもっていることが明らかになった。Contrastive focusは、形態統語論的な手段で表現され、Unmarked focusは、文章における位置で表現されることがわかった。すなわち、焦点構造と語順が密接な関係をもっていることが明らかになった。また、トピックが後続する節内における同一指示をコントロールしていることと、また、否定の領域はトピックに制限されること、さらに、疑問の領域は、基本的にトピックの外にあることが明らかになった。これらの発見は、ナイル諸語の文法を記述する上で、情報構造と統語論の関係を考慮することが重要であることを明らかにした。そして、本申請による研究が将来のナイル諸語の統語論研究の方向性を示すという重要な意義をもつこととなった。この成果については、ゲーテ大学(フランクフルト)で口頭による研究発表を稗田がおこなった。また、アフリカ諸語の情報構造をテーマにした国際研究集会を本申請の最終年度にフンボルト大学(ベルリン)の協力で日本で開催することが決まった。
2: おおむね順調に進展している
ナイル諸語間で比較することにより、ナイル諸語の統語論を明らかにすることを目標としている。特定の言語の研究は、目標以上に進んだが、比較するための他の言語については調査環境により十分な資料が得られなかった。
今年度は、24年度に調査が進まなかった言語に注力して現地調査をおこなう。そのために現地協力者との連携を密にして、調査協力者を選定する。
24年度内に出版を予定していたが、そのための十分な予算が残らなかった。25年度のケルン大学におけるナイル・サハラ言語学コロキウムで成果を発表するために翌年度の研究費とあわせて使用する。
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Proceedings, 6th World Congress of African Linguistics, Cologne 2009
ページ: 257-260