本研究の目的は北西カフカース諸語の言語特徴をデータベース化し、その類型的特徴を記述することである。具体的には、北西カフカース諸語の音韻、形態論、統語論の主要なトピックを中心に言語特徴を解明することである。平成26年度は次の三分野のついて研究実施計画を立て、以下のように実施した。 (1)音韻論の分野:(研究実施計画)アブハズ語とウビフ語のアクセント資料を用いて、北西カフカース諸語のアクセント体系を解明する。また北西カフカース諸語の音韻体系を呈示する。(26年度における研究実績)名詞を中心にアブハズ語とウビフ語の音とアクセントを比較し、北西カフカース祖語のアクセント体系を再建した。これは「北西カフカース諸語の類型的特徴:アクセントの比較研究」として纏めた。 (2)形態論の分野:(研究実施計画)アブハズ語のブジィプ方言の動詞構造をデータペース化し、標準語と比較する。またウビフ語とチェルケス語については資料から動詞構造をまとめる。(26年度における研究実績)ブジィプ方言のデータをさらに拡大して、ジィプ方言辞書を増補した。例文は形態素に分析し、ロシア語の訳を付けた。これは A Dictionary of the Bzyp Dialect of Abkhaz として研究成果報告書『北西カフカース諸語の類型論的研究』として印刷した。またウビフ語とチェルケス語の動詞構造をまとめ、資料とした。 (3)統語論の分野:(研究実施計画)北西カフカース諸語の統語特徴を他の能格言語と比較する。(26年度における研究実績)アブハズ語のジィプ方言とウビフ語およびチェルケス語の格と動詞の構造を中心にして、北西カフカース諸語の能格性の特徴を抽出し、他の能格言語と比較した。この一部は、類型学研究会(平成27年1月、専修大学)にて、「北西カフカース諸語の文構造:アブハズ語を中心にして」として発表した。
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