研究課題/領域番号 |
24320101
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大井 恭子 千葉大学, 教育学部, 教授 (70176816)
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研究分担者 |
成田 真澄 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 教授 (50383162)
保田 幸子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60386703)
田中 真理 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (20217079)
阿部 真理子 中央大学, 理工学部, 准教授 (90381425)
板津 木綿子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80512334)
ホーン ベバリー 千葉大学, 教育学部, 准教授 (80595786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | EFL writing / 東アジア / 国際研究者交流 / 学習者コーパス / 実態調査 |
研究概要 |
本研究には2つの柱があり、ひとつはライティング教育に関する実態調査であり、もう一つは学習者コーパス研究である。実態調査に関しては、昨年度行なった実態調査(パイロット版)のまとめを全国英語教育学会(北海道大会)にて発表した。パイロット版の研究の成果を論文化し、学会誌に投稿した(まだ採用には至っていない)。25年度は本科研の中間の時期にあたることから、EFL Writing に関する国際シンポジウムを開催した。”International Symposium in East Asia: Crossing the Borders”と名をうち、日本から一名、さらに海外から4名の著名な研究者を招きシンポジウムを開催した。本シンポジウムには広く日本各地からの100名ほどの聴衆の参加もあった。 ある程度の注目も集め、また、活発な議論の交換もあり、本シンポジウムは成功裏に終了したと考える。このシンポジウムの発表内容をまとめた冊子も作成した。また、本科研のHP上にもアップし、多くの人々に提供している。海外の研究者たちとは今後の国際版実態調査に関する討議も行うことが出来た。実態調査のアンケートの国際版を作成し、海外の研究協力者とすり合わせを行い、最終版を作り上げた。一方学習者コーパスの分野では、これまでの研究成果を国内外のいくつかの学会で発表し、注目も得た。また、それをまとめた論文も2本刊行された。日本語ライティング教育の現状という面からの研究も一定の成果を得つつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実態調査班としては、実態調査のパイロット研究を終え、これからの国際調査に向け準備をしているところである。東アジア諸国におけるEFLライティング教育の文献調査および前年度の各国における視察調査結果の知見から、アンケート項目を策定し終わり、それの英語版および各国語版の作成に入ったところである。韓国、台湾、香港、日本の4か国で同時に調査を実施する準備が整った。第一回目の国際シンポジウムの開催により、これらの国々における英語ライティング教育の問題点と課題に対する理解が深まり、今後の分析へとつながる手掛かりを得ている。 学習者コーパス班としては、東アジア諸国の英語学習者データと英語母語話者データとの言語的差異の分析を進めている。アジア圏国際英語学習者コーパス(ICNALE)に含まれる1)英語母語話者(大学生)が産出した英作文データと2)韓国、台湾、香港、日本のそれぞれの国の英語学習者(大学生)が産出した英作文データを量的・質的に比較分析し、その特徴に関してある一定の結果を得た。ひとつには、多変量アプローチを用いた分析の結果、英語学習者はライティングタスクにおいて、トピックと課題文の影響をつよく受けていることが示唆された。更に、東アジア圏の大学生によって書かれた英作文コーパスにおける58種類の言語項目(語彙、品詞、統語、談話など)を分析対象とした結果、香港人学習者と日本人学習者に関しては、習熟度による影響よりも母語による影響のほうが大きく、韓国人学習者と台湾人学習者に関しては、母語による影響よりも習熟度による影響の方が大きいということが明らかにされた。今後さらに、各種言語処理ツールを活用し、統計的手法により各国の英語学習者データと英語母語話者データにおける言語使用の差異を詳述し、そこで明らかになった知見の英語教育への応用を考えていく段階となっている。
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今後の研究の推進方策 |
実態調査班としては、実施したパイロット版に基づき、国際版のアンケートを作成、韓国、台湾、及び、香港におけるEFLライティング教育の現状と課題を把握するために大規模な実態調査を行う。本調査で明らかにしたいと考えている点は、1)英語学習者が「書くこと」において直面している問題点は何か、2)英語科目のなかで、「書くこと」がどのようにカリキュラム上配置されているのか、3)実際の授業の中で行われているライティング活動はどのようなものか、4)どのような「ジャンル」を学ぶ必要があるのか(社会的・組織的ニーズの調査)等である。 結果が出たところで、これらの課題の要因を各国の現状に即して分析する。 一方、学習者コーパス班に関しては、学習者コーパスから見た東アジアEFLライティングの言語的特徴の分析をさらに進めるために、英語学習環境が類似している東アジア諸国の大学生が作成した英作文を収集したアジア圏国際英語学習者コーパス(International Corpus Network of Asian Learners of English: ICNALE)を引き続き使用し、香港、台湾、韓国、日本という4つの国の英語学習者が同一の条件で産出した英作文に見られる共通の言語的特徴を様々な角度からの分析を更に推進させていく。 本研究の最終目標である「これからの英語ライティング教育のモデル」の構築にむけ、さらに研究を推進していく予定である。そのためには、ライティング教育の支援としてのライティングセンターの役割に関しても議論を深め、また日本語ライティング教育からの知見も有効に活用して研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に国際版のアンケートを行う計画があり、その際に、各言語への翻訳やアンケート用紙の印刷、分析に当初の予想より費用が掛かることが見込まれたため。 国際版アンケート作成費(翻訳・印刷・分析) 海外への送付費
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