研究課題/領域番号 |
24320105
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 正利 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80216308)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遷移確率 / 視線計測 / 学習者コーパス / 予測可能性 / 言語処理能力 |
研究概要 |
本研究は、遷移確率(ある単語の次にどの単語が生起しやすいか)という概念を用いて、語彙・文法・コロケーションの習得過程を包括的にとらえ、第二言語処理能力の発達を説明する理論を構築するための基礎的研究を行うことを目的としている。第二言語の習得を、個別の言語単位(単語や文法形態素)の習得ととらえるのではなく、言語単位が連続する確率的な知識の習得ととらえ、学習者コーパスと視線計測装置を使い包括的かつ精緻に観察・分析することにより、語彙・文法・コロケーションという三種類の知識が、どのように関連しながら中間言語体系を作りあげていくのかというメカニズムを、統一的に説明できる理論の構築を目指す。 本年度は、学習者コーパスのデータ収集方法の修正・試行データ収集・オンラインデータ収集システムの公開準備と、連語及び文法処理に関する視線計測データの収集および分析を行った。学習者コーパスデータについては、テーマの設定方法等を変更し、英語学習者および英語母語話者に英文エッセイを書いてもらい今回修正したデータ収集方法と実行手順を確認した。この修正に基づき、オンラインでのデータ収集が出来るように収集システムの公開準備を行った。また、既存の学習者データと大規模コーパスであるBNCについて2語の連語表現の遷移確率を計算した。 視線計測実験については、連語表現のデータを追加収集した。また、文法処理については、予備的な実験とコーパスデータの分析から、第二言語においては文法形態素と文構成要素のかかわる統語的な文処理とでは敏感さや習得過程に違いがある可能性が明らかになったため、計画を一部修正し、観察しやすい文処理における視線計測データの分析を先に試み、そこまでの成果を研究発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存の学習者コーパスデータの確認と整理に時間がかかり、新規に追加するデータのオンライン収集システムの開発に遅れが出た。また、予備的な実験により、文法処理に関して、文法形態素と統語との処理に違いがあることと、文法形態素には第二言語学習者は気づきにくいということがわかったため、計画を一部修正し、先に、どの程度文処理に敏感かという実験とその分析を行ったので、文法形態素に関する実験準備を先送りすることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
学習者コーパスについては、新規学習者コーパスデータのオンライン収集システムのプログラム自体はできているので、公開準備を急ぎ、データ収集協力を研究コミュニティーに呼びかけることで、データの収集の遅れは取り戻せる見込みである。また、視線計測実験については、データの収集・分析方法に関してもノウハウの蓄積ができているので、文法形態素と文構成要素の二種類の実験項目を合わせて一度の実験の実施でデータ収集が出来るように工夫をし、効率的にデータ収集を行えるように計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
学習者コーパスデータの新規追加収集が遅れたためと、視線計測実験の実施計画の一部修正のため。 学習者コーパスデータの新規追加収集システムを出来るだけ早く稼働させデータ収集の遅れを取り戻し、その収集作業と分析作業に支出する。また、視線計測実験も、文法形態素の実験項目を合わせて次年度に実験を行うことで謝金として支出する。
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