研究課題/領域番号 |
24320117
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大橋 厚子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80311710)
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研究分担者 |
脇村 孝平 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30230931)
菅谷 成子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90202126)
藤田 加代子 立命館アジア太平洋大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90454983)
菅原 由美 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (80376821)
斉藤 照子 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (70162211)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ユーラシア東南部 / 19世紀前半 / 国際交易 / 貨幣制度 / 農業不況 |
研究概要 |
本年度においても、主たる研究活動として、研究分担者および研究協力者による史資料調査および文献研究が行われた。その成果は、以下の二回の研究集会で示されている。 5月25日(土)に大阪大学豊中キャンパスにて、研究会を開催し、研究分担者を中心に、これまでの研究経過の中間報告をした。また、研究代表者である大橋が、本研究に関連して行われたこれまでの研究会等を踏まえて、「19世紀前半の経済変動と東南アジア:近世と近代のはざまで」と題する総括的な報告を行った。この内容については、以下(「現在までの達成度」のところ)で論じる。 9月7日に大阪大学豊中キャンパスにて、国際ワークショップを開催した。テーマは、「東・東南アジアの貨幣流通とグローバルな貿易動向の関連」と題して、海外からカリフォルニア大学ロサンジェルス校のリチャード・フォン・グラーン(Richard Von Glahn)、ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスからアオレジャンドラ・イルゴイン(Alejandra Irigoin)の両氏を招いて行われた。これら二人の外国人研究者が基調報告('The Demise of Chinese Bronze Coin as the International Currency of Maritime East Asia, 1450-1750’と’ Westbound for the Far East: North Americans joining the Asia trade and the end of European monopolies, 1780s-1850s’)を行った後、大橋厚子、菅谷成子、谷口謙次、岡田雅志、多賀良寛が報告を行った。この内容については、同様に以下(「現在までの達成度」のところ)で論じる。このうち、谷口、岡田、多賀は、研究協力者である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の現在までの達成度は、19世紀前半のユーラシア東南部の経済状況に関する歴史認識の深まりとして示すことができる。本研究が対象とするユーラシア東南部は、帝国(18世紀初頭までで言えば、清とムガル)に挟まれた狭間の地域であり、この地域の経済は、同時期において、内的・外的に多元的な要因(政治的、経済的、環境的な諸要因)による影響を受けていた。 それらの諸要因のうちで、特に重要なものを以下に列挙する。第一は、この地域がインドおよび中国との間で行ってきた貿易、およびこれらを担った外国人(インド系、中国系)の商業ネットワークから多大の影響を受けてきたという点。第二は、いわゆるウエスタン・インパクト。19世紀後半に関するイギリスによる覇権の歴史像を、19世紀前半に持ち込むことは妥当ではなく、オランダ、スペイン、アメリカなどの影響も考慮に入れたウエスタン・インパクトを考える必要があるという点。第三は、19世紀前半(特に、第二四半世紀)を特徴づけるデフレの問題。このデフレがなぜ起こったのかについては、実体経済の側面および貨幣経済の側面で、それぞれ複数の諸要因が考えられるが、本研究では、特に貨幣的な要因に注目してきた。上記の[研究実績の概要]で示した国際ワークショップにおいて、フォン・グラーン、イルゴイン、谷口、多賀の諸氏は、この時期のデフレに関連する貨幣的な要因について論じている。貨幣経済の側面と言っても、貨幣供給の問題と貨幣需要の問題に分かれるが、上記の四氏の研究では、必ずしも考えは一致しない。今後の研究の深化が必要となる点である。 本研究のもう一つの重要な課題である、このような経済状況に対してユーラシア東南部の各地域でどのような対応が見られたのかという点については、研究分担者、研究協力者の研究においてそれぞれ進められているが、紙幅の都合でここでは省略する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるので、過去3年間の研究と討論を踏まえた、国際ワークショップの開催と最終報告書の刊行を目指す活動が中心となる。 9月初旬に、国際ワークショップを開催する。英文ペーパーをもちより、国外からの招聘したコメンテーターを交えて議論する。個別の実証研究に加え、国際学界で共有されるべきグローバル史と地域史の架橋をめぐる理論的考察を重視したワークショップにしたいと考えている。なお、この国際ワークショップの前提として、6月末に準備研究会を実施する予定である。これはまた、後に述べる和文論集の刊行のための準備研究会としての意味も兼ねることになろう。 本年度の活動のもう一つの柱として、最終報告書の編集と和文論集刊行の準備がある。メンバーの個別研究に加え、3年間の議論の成果を含めて最終報告書とするが、これを基に平成27年度中を目標に和文論集の刊行(一般の書籍としての出版)を目指したい。 その他の活動として、国内・海外における補足的な史資料調査を行うことと、平成27年度に開催される予定の世界経済史会議(京都)へのセッションの申請を行うことを挙げておきたい。後者に関しては、7月末にセッション申請の締め切りがあり、プロポーザルを提出する予定である。ちなみに、前記の国際ワークショップは、このセッション申請と深く関連する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に郵便物を送る必要があり、少額であるが繰り越しを致しました。 研究代表者が本研究の総括的な中間報告を、研究分担者および研究協力者に送る予定である。
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