研究課題
本研究の目的は、日本と東南アジアの交流を物語る近世史資料を系統的に集成し、先学の研究を再検討するとともに、考古学と史学、美術史の垣根をこえた資料学としての日本と東南アジアの交流史の開拓を目的としている。そのため、朱印状や安南国書、絵馬、日本及び東南アジアで日本商人が残した貿易関係文物、漂流関係史料、伝世及び考古遺物として出土している交易品などの既知の史資料を資料化するとともに、あらたな史資料を探索し、調査研究を行う。本研究の成果は、研究者間に研究材料を広く公開し、近世対外交流史をあらたな段階へ昇華させ、日本と東南アジアの交流史にあらたなテーマを構築するものである。平成25年の調査実施は以下の通りである。①朱印状・安南国書を集成し、新たな資料を確認した。この資料を含めて藤田励夫によって「安南国日越外交文書集成」(『九州国立博物館紀要 東風西風』第9号)としてまとめられた。②分担者の黒田泰三とともに『朱印船貿易絵図の研究』(思文閣出版)を出版し、絵図研究の最新成果を明らかにした。③九州国立博物館において『大ベトナム展』が開催され、代表者の菊池や藤田のベトナム関連の論文が掲載されると同時に、一般向けの講演会で講演した。④代表者の勤務する昭和女子大学においてベトナム人研究者を招へいして、日越交流をテーマにした国際シンポジウムを開催した。その他に、国内(長崎など)や海外(オランダ)の短期調査を実施した。
2: おおむね順調に進展している
すでに、研究成果の一部は、2013年に九州国立博物館の『大ベトナム展』で一般向けに成果を公表すると同時に、近世日越交流を描いた「絵図」の研究成果は、『朱印船貿易絵図の研究』と題して、思文閣出版から刊行した。また、「安南国書」や「朱印状」の悉皆調査とその集成も、藤田によってまとめられた。そして、現地調査は順調に進展しており、その成果を順次まとめているところである。
現地調査(ベトナム、長崎、沖縄、関西など)を引き続き推進することがあげられる。また、日越交流史の史料集成を刊行し、さらなる資料集成とその刊行をめざすことである。
適正に予算を執行したが、若干の金額が余ってしまった。次年度の予算に組み込み、関連するベトナム語文献の購入にあてる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (6件)
東風西風
巻: 第9号 ページ: 1-59頁
季刊考古学
巻: 第123号 ページ: 88-90頁