本研究の目的は、日本と東南アジアの交流を物語る近世史資料を系統的に集成し、先学の研究を再検討するとともに、考古学と歴史学、美術史の垣根をこえた資料学として日本と東南アジアの交流史の開拓を目的としている。そのため、朱印状や安南国書、絵馬、日本及び東南アジアで日本商人が残した貿易関係文物、漂流関係史料、伝世及び考古遺物として出土している交易品などの既知の史資料を資料化するとともに、あらたな史資料を探索し、調査研究を行う。本研究の成果は、研究者間に研究材料を広く公開し、近世対外交流史をあらたな段階へ昇華させ、日本と東南アジアの交流史にあらたなテーマを構築するものである。 平成27年度に実施した調査などは下記の通りである。 ①代表者の菊池誠一がベトナム・ホーチミン市国家大学・人文社会科学大学と国際交流基金共催の国際シンポジウム(「近世期のアジアにおけるベトナムと日本」)で基調講演を行った。基調講演の内容は、これまでの科研費助成事業における研究の成果をもとにしている。②元分担者で現在、研究協力者の藤田励夫が「続安南日越外交文書集成」を著し、前年度に続き、我が国に残る日本とベトナムの外交文書を集成し、公開した。③ベトナムに漂着した日本人を取り調べた長崎奉行所の記録(写本、新出史料)を入手し、研究をはじめた。 その他、国内では沖縄・久米島と石見銀山で出土したベトナム陶磁器の調査を実施した。また、ベトナムで出土した肥前陶磁器を理解するため、佐賀県陶磁文化館で実施された「近世陶磁研究会」に参加した。国外ではベトナムの短期調査を実施した。
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