本研究の課題は、戦後沖縄の平和運動に関する記述・分析にとって不可欠な資料的基盤となる個人所蔵の資料群を調査し、その内容を詳細に把握するとともに、今後の活用モデルを構築することにある。そのための具体的な手法として本研究が取り組んできたのは、資料群の全体像を把握できる目録データおよびテーマ別資料リストの作成と、それに依拠したデジタル画像化である。 沖縄県伊江村のわびあいの里反戦平和資料館で保管されている阿波根昌鴻資料については、平成27年度に2回の集中的な調査期間(各4日間)を設けるとともに、デジタル画像化(スキャニング作業)に取り組む期間(各3日程度)を3回設定して、研究課題の進捗を図った。その結果、対象としてきた資料の目録データ作成を完了し、文書・書籍・書簡・写真など多岐にわたる資料群の詳細を正確に把握できる状態となった。それに基づいて伊江村の基地問題および住民運動に関する資料リストの作成を進め、米軍による強制接収が行われた1955年から1980年代までの関連資料を把握できる状態となった。そのうえで、同リストに依拠して資料のデジタル画像化に取り組み、1950年代~60年代の資料内容をデジタル画像によって確認できるようにした。 沖縄国際大学の南島文化研究所で保管されている大山朝常資料(立法院議員・コザ市長などの関連文書)については、平成27年度に2回の調査期間(各3日程度)を設けて進捗を図った。その結果、目録データ作成を完了して資料内容の詳細を把握するとともに、他機関に所蔵されていない重要資料の選別とデジタル画像化を進めた。 上記の2つの資料群は、戦後沖縄の平和運動を記述・分析していくために貴重な資料的であり、目録データ作成とデジタル画像化によってその詳細を確認する見通しが立ったことは、今後の活用と研究の展開にとって不可欠な基盤の形成を意味している。
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