研究課題/領域番号 |
24320135
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研究機関 | 公益社団法人部落問題研究所 |
研究代表者 |
廣川 禎秀 (広川禎秀) 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (30047237)
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研究分担者 |
竹永 三男 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (90144683)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近現代史 / 前近代史 / 地域社会 / 民衆運動 / 開発 / 生存 / 労働 / 部落問題 |
研究実績の概要 |
本年度は、第1回研究例会(6月6日)で年間研究計画を具体化した上で、4回の研究例会を開催し、合計11編の論文を発表し、6件の学会報告を行い、研究計画の基本とした、A基礎的・理論的問題の究明、B近世・近代・現代を通した具体的・地域的な実証分析の両面から研究を進めた。 この中、Aの研究課題では、廣川禎秀(広川禎秀)は、戦後の部落問題解決過程の通史的把握作業を進め、また1970年代に黒田俊雄が歴史科学運動の保守性克服の一環として提起した新しい地域史が、塚田孝らの地域史研究において実証的方法的質的に飛躍すること跡づけた。竹永三男も、近代日本の民衆運動として一つの歴史的段階を画する大正デモクラシーに関し、松尾尊兊の研究を方法・実証の両面から包括的に検討した。一方、前近代史では、塚田孝が地域史研究の課題と方法について和泉市域に即して研究を重ねたほか、飯田直樹・佐賀朝らとともに、上海・釜山での国際共同研究にも臨んだ。さらに、研究主題に関連して部落問題・身分制と地域社会・村落等に関する研究を推進してきた成澤榮壽(近現代)・大山喬平(前近代)の研究の足跡を聴き取り、本研究課題に関する理論と方法の検討の参考とした。 Bの研究課題では、前近代・近現代それぞれについて、個別具体的な実証研究を進めた。前近代では、藤本清二郎が和歌山、森下徹が萩という城下町を対象として、下層社会の構造分析を進め、佐賀朝は、近世遊郭社会史研究の到達点を確認した。また、近現代では、廣川禎秀(広川禎秀)は知識人の戦時下抵抗と戦後民主主義の関係、また近代都市史として飯田直樹は部落事務員について、島田克彦は大阪湾岸新田地帯について分析し、関連して富山仁貴は戦後の丹後地域、中村元が戦時下の八王子地域を対象に研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、本研究で設定した研究課題と方法、即ち、研究課題である「近代日本における地域社会の変貌と民衆運動」の歴史的研究を、理論と実証(地域社会及び民衆運動分析)の両面から、前近代・近現代の長期的視野に立って進めるという点において、上記「研究実績の概要」で述べたように概ね着実に進めていることである。 第二に、その中で、理論面では、廣川禎秀(広川禎秀)は、前近代史の塚田孝による地域史研究の方法の発展を受け止めつつ、地域の通史的叙述における歴史的個性の問題を彦根市史に即して検討し、地域史研究の発展が歴史科学運動発展の一面を有することも確認した。また、廣川禎秀(広川禎秀)は、戦後の部落問題解決過程の検討、過酷な戦時下抵抗の検討から、戦後社会運動の抵抗主体を長期的歴史的に把握することの重要性を確認し、長期的な民衆運動・社会運動と地域社会構造分析の関連・統合研究の重要性と意義を確認した。それは、竹永三男が大正デモクラシー史研究の成果と課題を松尾尊兊の研究に即して、現代的視点と地域社会構造分析の重要性という本研究の視点から検討して確認し得たことでもある。 第三に、研究の推進の中で、富山仁貴(丹後地域の教員組合運動と機業争議の分析)、中村元(八王子地域の社会・政治構造と運動の分析)という新たな研究協力報告を得ることができ、戦時・戦後研究のいっそうの実証的深化が得られたことである。
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今後の研究の推進方策 |
5年の研究期間の最終年度である今年度は、設定した研究課題「近代日本における地域社会の変貌と民衆運動に関する総合的研究」を、「基礎的・理論的問題の究明」「近世・近代・現代を通した具体的・地域的な実証分析」の両面から進めるという研究計画に基づき、研究例会での報告、研究参加者が所属する学会・研究会での報告を重ね、それらを学術論文として発表する。さらに、研究期間中に得られた学術論文と今年度執筆する学術論文によって構成する「研究成果報告論文集」を刊行する準備を進める。この「論文集」では、長期的な地域社会構造と民衆運動・社会運動の関連・統合分析の視点・方法に立って研究すること共通の確認とし、理論的方法的到達点を確認しつつ、個別的対象の研究においても社会の全体構造への視座を重視し、多様な分析方法を尊重しつつ、現代的視点も重視することとする。また、できるだけ公益社団法人部落問題研究所所蔵資料の活用もはかりながら共同研究を進める。 研究例会は、6月5日開催予定の第1回(佐々木隆爾報告)を最初として、年度内に4回以上開催する。この第1回研究例会では、地域社会構造と民衆運動・社会運動の関連・統合分析の方法について協議してこれを深化させ、研究参加者間で共有するとともに、年間研究計画を確認し、「研究成果報告論文集」の構成と刊行準備方法についても協議する。 同時に、前年度までに研究例会等で行った研究報告等の中、研究論文等として発表していないものについて、年度内に『部落問題研究』や学術雑誌に発表することとし、その準備を進める。
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