研究課題/領域番号 |
24320141
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
井上 治 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (70287944)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 『明鏡』 / 『王統明示鏡』 / モンゴル語 / チベット語 / 翻訳史書 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究は、モンゴル語で書かれた17世紀以降の史書の内容や記述方法に強い影響を与えたチベット語史書『王統明示鏡』と、その17世紀モンゴル語訳本『明鏡』のチベット語・モンゴル語対訳テキストと対訳語彙集を作成し、これに基づいて『明鏡』のテキストが生成された過程を語彙論的・翻訳論的角度から研究することを目的としている。当該年度には下のような実績があった。 8月までに、国内外のチベット語文献所蔵機関を通じ、入手可能な『王統明示鏡』の写本・刊本の複製を入手した。8月には、研究代表者と海外研究協力者計3名が中国・内モンゴル社会科学院で共同研究を行った。ここではまず、同院図書館蔵『明鏡』の原版本の複製を入手し、そのラテン文字転写による電子テキストを作成した。これに基づいて、すでに入手した『王統明示鏡』とを比較し、『明鏡』の翻訳に用いられた原本かそれに近いテキスト、あるいは誤脱のない質のよいテキストを選定する作業を進めた。その結果、ロシア・サンクトペテルブルク大学図書館蔵ラサ木版本『王統明示鏡』とTibetan Buddhist Resource Centerより入手したデルゲ木版本『王統明示鏡』のチベット語テキストを『明鏡』のモンゴル語テキストと比較することに決定した。そして、この二つの『王統明示鏡』のチベット語テキストのラテン文字転写による電子テキストの作成に着手した。 当該年度は、本研究の基本的研究対象である『明鏡』とラサ木版本『王統明示鏡』の複製を何の障害もなく入手できた、『明鏡』のラテン文字テキスト化を終えたこと、ラサ木版本とデルゲ木版本『王統明示鏡』のラテン文字テキスト化も6割方終えた段階にまで至ることができた。本格的な研究に入る前の準備作業を成功裏に進めることができた点で重要な進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた研究内容である、チベット語史書『王統明示鏡(rGyal rabs gsal bai me long)』とその17世紀モンゴル語訳本『明鏡(Gegen toli)』の原版本やその複製を入手すること、ラテン文字による電子テキストを作成することに関しては、予定通り、『明鏡』はテキスト化を終え、『王統明示鏡』はテキスト化に着手するところにまで至ったからである。
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今後の研究の推進方策 |
7月前半までに『王統明示鏡』のテキストを作成、8月全体集会(於内モンゴル社会科学院)で全員で検討し確定する。また、『王統明示鏡』と『明鏡』の対訳テキストと対訳語彙集の作成方法も確定する。年度末までに、井上とバレヤースタジンスカが対訳テキストと対訳語彙集(暫定版)を完成させ、調整と要修正点を明らかにしておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
『明鏡』と『王統明示鏡』複製にかかる費用が見込みよりも安価であったため、内モンゴルでの全体集会と共同研究が予定の半分の期間で目的を達成したため外国旅費が安価に収まったためである。次年度は予定通りの活動を行い所要の研究費を消化し、その余額と今年度未使用額は研究効率を上げるための研究補助への謝金に充てる。
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