研究課題/領域番号 |
24320145
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
長崎 暢子 龍谷大学, 人間・科学・宗教総合研究センター, 研究フェロー (70012979)
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研究分担者 |
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20187371)
粟屋 利江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00201905)
石坂 晋哉 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (20525068)
上田 知亮 龍谷大学, 現代インド研究センター, 客員研究員 (20402943)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガーンディー / アンベードカル / 多元的共生 / インド民族運動 / 格差 |
研究概要 |
第1回研究会(5月17日)では、「J. C. クマーラッパーのガーンディー主義的環境主義」、「ゴーカレーの地方自治構想と宗教対立」の2本の報告を議論した。ガーンディー主義的環境主義者の一人であるクマーラッパーの履歴と思想の概要と、ガーンディー以前のインド民族運動の指導者の一人であったゴーカレーの自治構想を、本科研の焦点であるガーンディーの政治思想との比較と関係を意識しつつ、共有した。 第2回研究会(7月13日)では、「近代インドにおけるラヴィ・ヴァルマー作品の展開と受容」、「ダリトの「地位達成」にみる帰属意識の分断と再生―デリーの清掃カーストを事例に」、「現代インドに生きる〈改宗仏教徒〉について」の3本の報告を議論した。とくに本科研にとっては、日本における最近のダリット研究の動向を聞けたのが収穫であった。比較的社会的地位の向上に成功したダリットの帰属意識、および、改宗仏教徒としてのダリットのヒンドゥー社会との共生の実態を、ダリットのアイデンティティーに焦点をあわせて共有することができた。 第3回研究会(12月21日)では、「アンベードカルの経済思想-農村の分析と展望を中心に-」、「アンベードカルから見るガーンディー」の2本の報告を議論した。経済思想については、グジャラート地方の農村における土地制度や慣行について、アンベードカルが法律の作成に関わっていた時期の理解を紹介していただいたのは、重要な貢献であった。長崎は、ガーンディーとアンベードカルの関係についての見通しを示すための作業として、「アンベードカルから見るガーンディー」を論じ、両者の活躍した時期が重なっていること、しかし対立だけでなく共通点もみられないわけではないことを論じた。 長崎は、2014年2月18日から3月4日までイギリスに出張し、大英図書館・ロンドン大学図書館において資料収集・調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に述べた活動に加えて、長崎は、11月27日の国際セミナーと12月15日の国際会議でも「ガーンディーからアンベードカルへ」の歴史的思想的流れを論じ、Tirthankar Roy (LSE), Gauri Viswanathan (Columbia University), Ghansyam Shah (National Fellow, Indian Council of Social Science Research) など、インド人の関連研究者と討論する機会を得た。これらの会議には多くの分担者も参加、発表したので、本研究の国際的貢献への可能性を確かめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
従来とほぼ同じペースで研究会を継続するとともに、成果の刊行に力を入れる。 長崎をはじめ、本研究参加者の多くは、昨年度から、東大出版会から刊行される予定の『シリーズ現代インド』(全6巻)への寄稿を準備してきた。それらはすべて今年度中に刊行の予定である。長崎は、「差別解消の方法とヴィジョン-ガーンディーとアンベードカル」田辺明生・杉原薫・脇村孝平編『シリーズ現代インド1 多様性社会の挑戦』東京大学出版会、を刊行する。また、関連する研究成果として、長崎暢子・堀本武功・近藤則夫編『シリーズ現代インド3 深化するデモクラシー』 東京大学出版会、も刊行される予定であり、長崎はその序論(長崎暢子・堀本武功・近藤則夫「インド型民主主義の可能性」)および単著「近代政治思想の形成と展開」を執筆する。粟屋、石坂は第1巻に、上田は第3巻に、それぞれ寄稿する予定であり、粟屋は『シリーズ現代インド5 周縁からの声』の編者の一人である。 さらに、これ以外にも、本研究の成果をまとめる準備を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
長崎研究室で作業していただいているアシスタントの経費が抑えられたため、資金に余裕が出来たので繰越可能な本研究費の一部を繰越した。ただし本研究そのものが滞ったわけではない。 成果の刊行のための最終的な資料整備や調査と、海外への研究成果の発信に重点配分したい。
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