研究課題/領域番号 |
24320159
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
阿部 芳郎 明治大学, 文学部, 教授 (10221730)
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研究分担者 |
樋泉 岳二 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20237035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 先史考古学 / 貝塚 / 生業 / 土器型式 / 製塩 |
研究実績の概要 |
本年度の分析は縄文時代後期から晩期にかけての生業活動の実態を解明するために千葉県八木原貝塚の出土遺物の分析を実施した。とくに層位的な遺物の出土状況を確認するために、出土遺物の接合、個体識別、接合関係の検討と型式学的な検討を加えた結果、後期後葉から晩期前葉にいたる都合6型式の土器群の層位的な関係を整理することができた。これらの中には既存の型式の細分を示唆する状況も確認され、分析対象地域における時間軸の精密化を可能とする成果として位置付けることができる。また層位的な土器の出土状況を整理することにより、粗製土器などの時間的な変遷も把握することが可能であり、型式変遷を器種構造レベルで検討することが可能となった。 また貝層における動物遺存体の分析も並行しておこない、一部の調査区内において貝類の成長線分析と魚骨の同定作業を進めた。また、未洗浄の複数のサンプル内において海藻付着性の微小動物遺存体が比熱した状態で複数種類検出した。こうした遺存体の在り方は海藻を焼いて灰として利用した痕跡と考えられ、製塩行為を想定させるものであった。これまで縄文時代の土器製塩は晩期初頭に霞ヶ浦沿岸において開始されると考えられてきたが、八木原貝塚は下総台地中央部に位置することや、検出された層の年代が後期中葉である点からみて、これまでの製塩よりも年代的に遡上することを示唆する結果である。 これらの成果については学術論文や学会での口頭発表において成果の一部を公開した。 今後は炭化物などの分析から植物資源の利用史の解明を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は遺跡の発掘調査を予定していたが、これまでの出土資料の分析を優先した。その結果、当初に計画していた遺跡の形成過程を詳細に検討する作業は課題として残された。反面でこれまでの出土品の分析を充実させることができた。 その結果、本研究の当初の目標であった後晩期の長期継続遺跡の実態について、主に動物遺存体の時期的変遷、土器型式の構造の解明と時間的細別を可能とする成果が得られた。どくに貝類や魚類、製塩にかかわる微小生物遺存体の分析などで予測を上回る成果を上げることができた。 また本遺跡の分析成果を含めて縄文時代の中期から晩期への変遷に関するこれまでの仮説を再検討するために、連携研究者を含めた検討会を実施し、現時点での成果をシンポジウムを開催して公開した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である後晩期の長期継続社会の形成過程とその意義について、具体的な遺跡の分析成果を踏まえて評価を加え、弥生時代への変遷までを視野に入れた長期的文化変遷を評価する方法論的基盤を構築したい。 そのために、昨年度開催したシンポジウムを引き継ぐ形で本研究の成果と課題をまとめたシンポジウムを開催する。同時に大学付属博物館において具体的な分析成果や整理をおこなった出土遺物の展示を行い、広く一般に成果を普及する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺跡出土遺物の分析の過程で、新たな資料の発見があり、またその分析を進めるために研究計画を作成した段階で予定していた遺跡の発掘調査を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい重要資料が発見されたため、これらの資料の分析を進めることにより、本研究が当初の予測を上回る格段の成果をあげることができると考えられるため、引き続き資料分析をおこなう。
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