研究概要 |
まず,文献調査,および既実施アンケート調査結果の精査に基づいて,今回の事例調査の対象とすべき離島地域の候補を検討した結果,島根県隠岐諸島,東京都小笠原諸島および沖縄県宮古島を選定し,それぞれについて,ブロードバンド整備の状況,商工観光業等の動向等に関する情報収集と文献調査を行った.さらに各地域の行政,商工観光団体,事業者等に対するヒアリングを行い,ブロードバンド整備およびインターネット環境の経緯とその利活用状況についての情報を収集した.その結果,島民の生活面では,ブロードバンド整備は特に住民の買物行動に強い影響を与えており,ネット通販と宅配便を利用した買物が急速に普及し,日常生活を大きく変えている事が判明した.たとえば,小笠原諸島では,生鮮食品以外はネット通販で購入する習慣が広がっており,その影響を受けて酒店や洋服店が閉店に追い込まれた例が指摘されている.また,商工業の面では,隠岐諸島において,生鮮魚介類を特殊冷凍して,島外へ広く出荷する事業が西ノ島町を中心に展開されており,出荷先との受発注や一般顧客との直接販売にインターネットが活用されていることが判明した.一方,小笠原諸島では,小規模事業者がネット通販によって商品や資材を仕入れ・調達するという利用法が広がっている.観光面では,特に宮古島で,来島観光客に対するヒアリング調査を行い,島外への宿泊・観光施設の情報発信という点ではブロードバンドが一定の役割を果たしていることが認められるが,旅行手配に関しては,事前に大手旅行予約サイトで済ませる観光客が多く,島内のブロードバンド普及と直接的な関わりは薄いことが判明した.こうした結果を受けて,来年度は,隠岐諸島,小笠原諸島における住民の生活行動とインターネット利用に関するアンケート調査,隠岐諸島における生鮮魚介類関係事業者の詳細な実態調査,西南諸島の他島における観光客ヒアリング調査等を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では,昨年度までの関連調査のデータをもとに,事例調査の対象とすべき地域候補を選定し,現地調査により当該地域でのブロードバンド整備の状況と住民生活・産業への影響の概要を把握し,併せて試行的な現地調査を行って,次年次以降の現地調査の体制を確立することを予定していたが,概ね,予定通り調査を遂行し,隠岐・小笠原・沖縄の各地域を調査地域として決定し,今後の調査体制を確立することができた.
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今後の研究の推進方策 |
調査地域の自治体・地域団体等の協力を得て,本格的な現地調査を進める予定である.すでに現地調査の実施体制は概ね確立することができているので,来年度は,住民に対するアンケート調査,商工業者へのヒアリング調査,観光客へのヒアリング調査を平行して進めることとする.
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