研究課題/領域番号 |
24320168
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤田 裕嗣 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10181364)
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研究分担者 |
阿部 俊夫 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60465812)
礒永 和貴 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (10201922)
牛垣 雄矢 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30508742)
小野寺 淳 茨城大学, 教育学部, 教授 (90204263)
土平 博 奈良大学, 文学部, 教授 (70278878)
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 教授 (00420414)
平井 松午 徳島大学, その他の研究科, 教授 (20156631)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
古田 昇 徳島文理大学, 文学部, 教授 (30299333)
塚本 章宏 徳島大学, その他の研究科, 准教授 (90608712)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 復興支援 / 地籍図 / GIS / デジタルマップ / 福島県 / 相馬城下町 / 津波 |
研究概要 |
本研究プロジェクトは、歴史地理学が今まで研究を進める中で蓄積してきた経験を生かして、東日本大震災の被災地について震災前の地籍図・古地図に表現された郷土の姿に注目し、それらの地籍図・古地図に含まれる地理情報を地図やデジタルマップの形で地域住民に提示することで、復興支援に資する目的を持つ。さらに、この実践を通じて、今後に日本列島で想定される災害に立ち向かうために必要な地籍データを歴史地理学の観点から問題にする。研究上における視点の特徴と課題は、1)被災地域における明治初期の地籍図の収集とその作製過程とその地理(地図)情報に関する研究、2)地籍図・古地図情報にもとづく国土情報管理・景観復原と現代のGISデジタルマッピング地図作製と復興支援、の2点にまとめられる。 地籍データが一括して福島県歴史資料館に所蔵され、残存状況に優れている福島県をフィールドとして選定し、全国への位置づけを試みた。地籍図の作成過程と収集に関しては、近世相馬藩を構成した旧宇多郡に特に注目した。地籍データのうち、地籍帳・丈量帳についても、中心となる相馬城下町や津波の被害を受けた原釜港など主要な地区について、地籍図を用いたGIS化の作業を進めている途上である。一方で、残存状況に優れている大津市など、他の事例にも考察を及ぼしつつある。 以上のように、本研究プロジェクトの意図は、地籍図・古地図に現れた郷土の姿を被災者に提示することによって復興への活力に結びつけようとする点にある。過去における歴史災害や土地形状の歴史遺産を読み取るという、従来も取り組んできた研究に立脚した上で、地籍図を基にして防災と復興に向けた社会的実践に結び付ける新たな視点の研究アプローチを今後とも目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明治初期に作成された地籍図と地籍帳から成る地籍データが、福島県の重要文化財として一括して所蔵されている県歴史資料館側のご協力が得られて、一通り必要なスキャン作業は終え、明治期に書かれた資料解読の経験も持つ院生の助力を得て、入力して、GIS化への作業を地道に進めている。その成果を地元住民に還元して、意見を徴収する現地調査を本格化させる前に、建築学に基づく他の研究事例などを参照したり、実務家である土地家屋調査士と意見交換したり、と必要な努力を重ねている途上である。一方で、相馬市役所は、住宅の再建を実際に進めていく実務のために、地元住民との話し合いを始めようとしており、市役所との交渉は慎重に進めている。これは、市役所との協力関係を図り、信頼関係を得るためには重要な手続きであると認識している。 なお、東北地方以外では、滋賀県大津を構成する個別町について、近世絵図の控えのみならず、明治期に個別町によって作成された地籍図が、大津市歴史博物館と滋賀県立図書館に所蔵されていると昨年4月の研究集会で確認できた。明治期に個別町による地籍図を作成する課題に直面して、近世絵図が生かされている可能性を検証する格好のフィールドと考えられる。地籍データ整備過程についての考察を深める。
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今後の研究の推進方策 |
近代の災害の前後で起こった地割上の変化について地図上に落とそうにも、現地踏査で殆ど不明とされている点は、今回の東日本大震災における復興過程でも指摘できると考えられ、復興に関する資料の整備を意識しながら、取り組む。最終年度の4年目に向け、提言を目指す。 研究者間の分担については、今年度の方針を引き継ぎつつも、反省の上に立って、以下のように少し組み替える。要は、フィールド班は、福島県チームと、県外に設定したフィールドの2チームに分かれ、いずれも歴史にも遡って災害の状況を考察しつつ、地籍データの整備過程についても検討を進める。もう1班は、近代大縮尺地図における公図について全国的な展望を模索する一方で、GISについて、入力作業を進めながら記載事項をGISに乗せる意味についても問い直す。 まず、福島県を問題にするチームは、1)福島県内における地籍関係データとその展開過程、2)福島県歴史資料館に所蔵された地籍図の検討とに分かれ、得られたデータの住民への還元、調整にも努力を傾注する。 その上で、福島県以外にも、フィールドを設定することで課題を深める。災害との関連については、兵庫県で阪神淡路大震災と近年の洪水に伴う地籍図の取り扱いを検討する。遠くは、沖縄県のみならず、近代日本が地籍図整備事業で培った成果を導入することになった台湾や韓国にも目を配る。なお、近代都市における大縮尺地図整備にも注目し、東京について関東大震災の影響を考察して、課題に迫る。 なお、9月末に予定されている日本地理学会秋季学術大会が、富山大学で開催される。富山県土地家屋調査士会とも連絡を密にし、本科研費研究プロジェクトと連携している「地図・絵図資料の歴史GIS研究グループ」と連動する形で研究集会を開催したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
相馬市役所は、住宅の再建を実際に進めていく実務のために、地元住民との話し合いを始めようとしており、市役所との交渉は慎重に進めている。これは、市役所との協力関係を図り、信頼関係を得るためには重要な手続きであると認識している。 主フィールドである福島県相馬市を数回に分けて調査する予定である。相馬市役所に赴いての調整を含めて、その調査旅費として見込んでいる。
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