研究課題/領域番号 |
24330005
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
村山 眞維 明治大学, 法学部, 教授 (30157804)
|
研究分担者 |
D・H Foote 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10323619)
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
REPETA Lawrence 明治大学, 法学部, 教授 (10398547)
飯 考行 弘前大学, 人文学部, 准教授 (40367016)
吉岡 すずか 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60588789)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 法社会学 / 大量不法行為 / 損害賠償 / 原子力損害 / 国際比較 |
研究概要 |
2013年度は、2012年度と同様に、実務家をも交えて、原子力損害賠償の現状と課題についてシンポジウムを開催し、原子力損害賠償の進展状況の検討と問題点の洗い出しを行なった。シンポジウム報告者は別記学会報告に記載の通りであり、他に研究分担者のフットが原発ADRについてのコメントを行なった。シンポジウムで報告を行なった実務家は、原子力損害賠償紛争処理センター総括委員、原子力支援機構理事・福島事務所長、原発被災者弁護団(東京)団長、ふくしま原発被災者弁護団事務局長、ほかに福島県の弁護士と司法書士である。このシンポジウムでは、日米比較の観点から、同じく大量不法行為の事件であるBPオイル漏れ事故の賠償状況についても検討を行なった。 本研究参加者は、引き続きそれぞれの分担について研究を継続した。村山とフットは主に原発ADRを中心とする原発賠償の進展状況と弁護士の関与状況について調査を行なった。BPオイル漏れ事故についての比較的研究を継続して行なっている。レペタは原発についての情報伝達のあり方について研究を行なった。佐藤岩夫は質問票調査によって、吉岡すずかは主に聴き取りによって、主に法テラスを中心とする公的な法的支援が岩手、宮城、および福島3県でどのように展開されているか、問題は何かを調査研究した。また飯は岩手を中心に司法過疎地における被災者のための法的支援のあり方について研究を行なった。本研究参加者は以上の研究に基づき、それぞれ、米国のLaw and Society Association、日本法社会学会、および日本災害復興学会において報告を行なっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、地震津波の被害と原子力事故による被害の双方について、法による対応がどのようになされているかを追跡しているが、研究分担者の間でこれまで予定通りに聴き取りや実地踏査が進んでおり、研究途中の成果についても論文や学会報告という形での公開が進んでいる。 原子力損害賠償については、これまにない規模の大量不法行為事案となっているが、関係者からの聴き取りを中心に「定点観測」もこれまで順調に進んで来ている。また、実務関係者を交えて問題点を検討するシンポジウムも2012年と2013年に開催し、関係者が賠償過程における問題点を洗い出すと同時に、賠償過程全体の状況について見通しを得ることにも役立っている。 国際的な観点からの比較も米国のハリケーンの被害とBPオイル漏れの被害を対象に進められており、今後も順調に研究が進められる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで福島県においては主に原子力損害賠償の進展状況について、宮城県と岩手県においては被災者に対する法的支援の提供状況について、多くの特定地点を定めて、弁護士を中心とする支援提供者からの聴き取りを重ねてきた。これからもこうした定点観測的調査を継続して行なっていく予定である。こうした定点観測的調査の狙いは、状況の進展を測ると同時に、関係者がどのような活動を行なったについて、当事者の利害に囚われない記録を残しておくことにもある。2012年と2013年に実施したシンポジウムも同様の狙いで開催しているが、今年度は2013年に実施したシンポジウムを冊子の形にして広く関係者に配布し、今後の議論に役立てる予定である。 2014年度中にも、引き続き第3回目の実務家を交えたシンポジウムを開催したいと考えている。これまでのシンポジウムは、実務家にとっても全体状況を見渡し自分や所属する組織の活動を見直す良い機会であると評価されており、こうした形で被災者の支援にいささかでも貢献することができれば幸いである。 国際的比較、特に米国におけるBPオイル漏れ事故への対応に見られる弁護士や和解手続のあり方について、比較の観点からの検討を継続して行なう。わが国における原発ADRの試みはわが国のみならず国際的に見てもユニークなものであり、不動産賠償などがほぼ終了した段階でその意義を検討し直すことが必要であろう。大量不法行為における賠償手続のあり方のひとつとして、国際的な観点からの検討を進めたい。本研究の最終年度に、国際的な観点からの和解手続の位置づけと評価を行なうシンポジウムの開催も検討していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月中に使用したが会計処理が終了しなかったため次年度扱いとなった。 3月中に使用が終了している。
|