研究課題/領域番号 |
24330005
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
村山 眞維 明治大学, 法学部, 教授 (30157804)
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研究分担者 |
D・H Foote 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10323619)
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
REPETA Lawrence 明治大学, 法学部, 教授 (10398547)
飯 考行 専修大学, 法学部, 准教授 (40367016)
吉岡 すずか 桐蔭横浜大学, 法務研究科, その他 (60588789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 震災復興 / 大量不法行為 / 原子力損害賠償 / 総合法律支援 / ADR |
研究実績の概要 |
平成26年度も前年に引き続き、福島県における東電原子力発電所事故による被災者への賠償問題について調査を続け、県内において聴き取りを行なった。東電による賠償は不動産賠償の手続が本格化したのは平成26年に入ってからであり、それとともに移住のための費用の支払いも始まった。全体としてみれば、大部分の被災者が東電基準で支払いを受けており、不動産賠償の支払いも大きく進んだが、避難費用と精神的損害についてのADRへの申立が原子力損害賠償紛争解決センターに対して引き続き行なわれており、増加傾向にある。避難に関わる線引きと賠償金額決定のあり方への不信が根底にあると言えよう。帰還可能地域が増えるにつれて賠償打ち切りも広がり、今後の被災者の生活がどのようになっていくのかが、特に不動産賠償額が大きくなかった人々について、懸念されるところである。また、元の居住地への復帰が以前の共同体の復活のような形で行なわれうるのかどうか、かりに除染が進んで線量としては居住可能になるとしても、多難であるように思われる。この点では法は賠償金額の増額という形でしか対応できていないように思われる。 地震津波が主な被害である宮城県、岩手県においても、状況は福島県と異なるとはいえ、復興は必ずしも迅速には進んでいない。仮設住宅に住む人々への支援は、居住者の多くが高齢者であることもあり、法的支援だけではなく、医療や福祉給付に関わる事柄なども一体化して行なわれることが望ましい。そうした状況は、福島県でも同様である。本研究では本年度も被災者のニーズを探る調査を行なったほか、法的支援だけでなく福祉的支援を含む総合的な支援の可能性を探っている法テラスの活動調査も行なった。こうした支援を従来の弁護士業務のように依頼者がくるのを待つのではなく、ニーズを抱えた人々に積極的にアプローチするアウトリーチ型支援として行なう可能性についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島県における原子力損害賠償の進展状況を追う調査はその後も順調に係属して行なわれている。宮城県と岩手県における地震津波からの復興と法の役割についての調査も一部に若干の遅れがあるが、ほぼこれまで通り行なわれている。また、法テラスを中心とした新しい法律支援についての動きも視野にいれ、被災者のために法は何をできるかについての検討も計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も今年度と同様、原子力損害賠償のプロセスを追い、また、地震・津波からの復興状況を追うために、福島県、宮城県、岩手県の各地で聴き取り調査を続ける予定である。また、来年度前半までに原発賠償について一昨年度末までの状況との違いが見られるときには、今年度後半に原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、原発弁護団、福島県弁護士会などの関係者に呼びかけ、第3回目の原子力損害賠償についてのシンポジウムの開催もしたいと考えている。また、米国におけるメキシコ湾岸でのBPオイル漏れ事故に関わる第二次訴訟がほぼ終了すると考えられるため、その手続の全体的あり方とわが国の原子力損害賠償の手続の現状との比較も進めたい。また、地震・津波の後の復興過程における法律家の役割と、米国のハリケーン・カタリナ被災からの復興過程における法律家の役割との比較も進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が2014年度配分額について、2015年3月に現地調査を予定していたところ、訪問先の都合その他の事情により調査日程を同年4月以降に再設定することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度のできるだけ早い時期に現地調査を行なうほか、2015年度の予算は所期の目的に従い使用する予定である。
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