研究課題/領域番号 |
24330008
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤谷 武史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (90313056)
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研究分担者 |
浅野 有紀 学習院大学, 法学研究科, 教授 (70272937)
原田 大樹 九州大学, 法学研究科, 准教授 (90404029)
横溝 大 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00293332)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グローバル化 / 公法学 / 私法学 / 抵触法 / 法多元主義 / 正統性 / 消費者保護 / 社会保障 |
研究概要 |
本研究は、グローバル化が齎す国内法秩序の変容を適切に把握し規範的提言を行いうる法学理論を提示することを最終的な目的とし、その第一歩として、公法学と私法学の間での新たな協働に向けた理論的基盤を構想するものである。研究初年度である平成24年度は、「グローバル化と法」に関する諸外国の理論動向の調査と整理に注力し、ドイツおよびアメリカの公法学、抵触法学、法多元主義に関する先行業績を比較対照し、公法・私法に共通する課題、着眼点の相違、今後の対話のための鍵概念を見出した。例えば、(1)非国家的規範の形成.適用における「正統性」の概念(公法学における「開かれた国家」概念と私法学における「自己決定」)、(2)多元的・多層的な法秩序間で規範が相互浸透-輻輳する状況について抵触法的処理の可能性を検討する前提としての法秩序間相互の「信頼」「相互承認」の概念、等である(成果の一端として、横溝.自治研究89巻1号論文、原田・行政法研究1号論文、浅野「法多元主義と私法」論文を既に公表済みである)。年度後半には、以上の中間的な見通しに基づき、「グローバル化と法」の分野で国際的にも注目される論者であるChristoph Moellers教授(ドイツ・フンボルト大学)、Peer Zumbansen教授(カナダ・ヨーク大学)との意見交換を行い、今後の研究方針につき有益なコメントを受けるとともに、次年度以降の国際的な研究協力に向けた具体的な対話を開始した。意見交換の結果、「グローバル化への法の対応」は各国に共通する課題であると同時に、各国の法文化・社会構造による問題構造の相違も大きく、日本法に固有の経験や議論を世界に発信する必要性は当初の想定以上に大きいことが認識された。また、公法と私法を架橋する理論構築の試みは世界的にも類例が少なく、本研究の理論的新規性と潜在的意義についても確認されたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では初年度の目標は国内外の先行研究の調査とその総括であったが、年度後半には先行文献の調査・検討を踏まえて析出された中間的な仮説に基づき、すでに海外の主導的な研究者との実質的な意見交換を開始している。もちろん、今後も研究の進展に応じて仮説を精緻化し、最終的な理論へとまとめ上げる作業を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた理論的仮説をさらに具体化・精緻化するために、国内外の学会・研究集会での報告と意見交換、成果論文の公刊を積極的に行う。初年度に開始した国際的研究対話の継続的成果であるものも含め、すでに3件の告、2件の国内学会報告を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の後半に当初の想定以上に国際的研究交流の実を挙げることができた結果、次年度における国際学会等での成果報告の機会が当初計画を超えて増大することが予想されたため、助成金初年度受入分の執行を計画的に留保した結果である。これらはすべて上記国際学会報告等のための外国旅費に充当する予定である。
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