研究課題/領域番号 |
24330020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安田 拓人 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10293333)
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研究分担者 |
酒巻 匡 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50143350)
岡田 幸之 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・司法精神医学研究部, 部長 (40282769)
安藤 久美子 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・司法精神医学研究部, 精神鑑定研究室長 (40510384)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 責任能力 / 精神鑑定 / 裁判員裁判 / 司法精神医学 |
研究概要 |
平成25年度においても、研究協力者の裁判官より刑事裁判例の提供を受け、複数の裁判官をゲストで招いての共同研究会を3回実施した。これにより、とりわけ摂食障害と関わるクレプトマニア(窃盗癖)の責任能力に関わる問題(責任能力、量刑とりわけ執行猶予の判断)の総合的検討を行うことができ、処遇論を見据えた新たな研究の必要性も浮上した。 この問題については、一部の精神科医が責任能力の減弱を認め、執行猶予として治療を行うべきだとの積極的な働きかけを行い、この主張が弁護人により法廷に持ち込まれ、大きな問題となっているが、司法精神医学側からの知見と法学・裁判実務側の知見を総合することにより、摂食障害と関わる場合であっても、クレプトマニアが心神喪失・耗弱状態をもたらすような責任能力への影響をもたらすことは考えられないとの結論に至った。これは近時の大きな問題についての貴重な成果だと言ってよいものと思われる。 また、共同研究では、分担者の岡田が提唱している、精神鑑定の8ステップの具体化に努めており、精神鑑定および責任能力の具体的判断枠組みについては、これを踏まえた共同研究を推進している。このステップの後半部分、すなわち、法的判断に関わる部分については、判例理論の正確な検討ならびに具体的な判断に際して考慮されるファクターの分析は平成25年度において相当進捗したところである。なお、安田は、これらの成果を幾つかの論文として公刊しており(1本はなお校正段階のため業績リストには登載していない)、実績として具体的な形に現れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな柱は、研究協力者の裁判官と連携し、裁判員裁判等で問題になった責任能力判断に関わる裁判例を精緻に分析することにあるが、平成25年度も、裁判所側の熱意と厚意により、相当数の貴重な裁判例を入手し、これを具体的に分析することにより、精神鑑定及び責任能力判断の具体的枠組みを構築する大きな手がかりを得ることができており、このことにより研究の順調な進展が支えられている。 共同研究メンバーによる研究業績の公刊も順調かつ精力的に行われており、業績面から言えば(2)よりはむしろ(1)と自己評価することが許されるべきものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、研究協力者の河本雅也判事がさいたま地裁に異動されたことから、研究会はさいたま市内で引き続き実施する。 交付決定された予算額の関係上、共同研究メンバーによる海外視察・調査は、今年度も実施しないこととし、国内での成果とりまとめ作業に専念する。 平成26年度は最終年度になるため、岡田の8ステップを肉付けする形を想定した、具体的成果のとりまとめに向け、精神医学側と法学・裁判実務側の対話をより充実させ、1ステップずつ密度の濃い議論を行うこととしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の酒巻においては、平成25年度末にアメリカで刊行予定であった、高額図書の購入を予定してたが、刊行時期が遅れ、京都大学内における洋書発注期限を過ぎてしまったため、平成26年度において購入することにしたことから、相当額の未使用額が発生したものである。 安田の未使用額は5000円程度のものであり、購入が不可欠な書籍の額に満たないことから、次年度の補助金などと併せて使用することが、効率的かつ効果的な執行につながると判断したものである。 酒巻における未使用額発生の理由は上記の通りであるため、平成26年度において速やかに発注を行うことにより、適切かつ有効な使用は容易である。 安田については、次年度の補助金等と併せて、計画的に執行するが、当該額についてはすでに、DSM-5等の新しい情報を獲得するための書籍購入にあてる予定である。
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