研究課題/領域番号 |
24330021
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大塚 裕史 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40304290)
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研究分担者 |
上嶌 一高 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40184923)
小田 直樹 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10194557)
嶋矢 貴之 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80359869)
宇藤 崇 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30252943)
池田 公博 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70302643)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 過失犯 |
研究概要 |
実体法分野、訴訟法分野についてそれぞれ後掲の論文が執筆され、以下の内容のような成果を得た。 実体法分野で代表者大塚による著書分担執筆論文は、従来の過失犯において独立の問題として論じられてきた鉄道事故事例と組織幹部の責任について、尼崎列車事故を素材として、両者が交錯する固有の問題について検討を加えた。まず、予見可能性の意義と内容を巡る近時の学説に批判的検討を加え、事故につき、予見可能性、結果回避義務、正犯性のいずれの点でも過失犯は成立しないと分析し、予見可能性の内容の検討を精緻化する方向性を示すものである。分担者小田により公表された論文は、過失構造論の対立の意義にについて考察を加え、近時提言されたモデル論について、その限界を指摘しつつ、構造論の意義と内実を指摘し、判例における注意義務の扱い方を検討し、組織的なシステム内での過失のあり方を明らかにし、注意義務と不作為犯の作為義務の関係、予見可能性と注意義務の関係、過失犯の訴因設定方法、組織間の関係の過失犯要件への影響を論じ、議論の方向性を示すものである。 訴訟法分野で分担者池田により公表された2本の論文は、特に組織犯罪を念頭に、組織構造の解明につながる供述を獲得するための動機づけの手法として、組織構成員の一部に一定の利益を供与することの当否およびその具体的なあり方について検討を加えるもので、組織縦断的・横断的過失事案の全容解明につながる手法の検討としての意義をも有する。分担者宇藤により公表された論文は、過失犯としての立件の可能性、可罰性を判断するにあたり、内心を推し量るうえで有力な証拠となる行為者の供述はなお決定的な証拠の一つであり、そのような点も踏まえつつ、被疑者の取調べの規律のあり方を論じたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後掲のとおり、実体法分野・訴訟法分野でそれぞれ業績が公表されており、比較的順調に推移しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
実体法分野と訴訟法分野の研究成果の融合に努め、組織縦断・横断的過失の特性をより踏まえた研究をすすめ、最終年度の成果をまとめたいと考えている。その際には、それぞれの分野の解釈論にどのような帰結をもたらすか、社会問題としての事故について、どのような法的対応を試行するかという微視的・巨視的な視点についても研究を深めたいと考えている。また論文以外にも、学会部会での報告を行うなど、成果のより積極的な公表を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
図書の購入費、人件費の支出がやや予想を下回ったため生じた。 選定済みの購入予定洋書が複数あるため、そのために使用したいと考えている。また成果を研究報告するための出張費としても使用する予定である。
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