研究課題
(1)過失犯の基本構造部分に関する成果 後掲小田論文は、過失犯の注意義務認定において、形式的制約を解体する方向性に危惧を示し、管理関係に基づく無制限の過失犯成立について批判的立場を示した。その上で、後者の制限のためには、前者による制約を役割分担も定めるものと理解し、競合的な過失犯の成立を制限する方向で考慮すべきであるとする。後掲大塚論文(川端古稀)は、予見可能性に関し、その緩和を志向する最新の議論に対して、客観的帰責の前提条件を検討するための予見可能性と、主観的帰責を基礎づける予見可能性を区別すべきことを指摘の上、そのために個別具体的結果に対する予見可能性(事後的予見可能性)が必要であることを指摘し、後者の内容、判断基準等を示した。(2)過失競合事案の処理に関する成果 後掲大塚論文(野村古稀)は、過失単独正犯と過失犯の共同正犯の理論関係について明らかにし、共同義務の共同違反関係(義務内容の同レベル性とその違反の相互的な促進関係)を必要とする見解を示し、いわゆる明石市歩道橋事故事件(強制起訴関係)を例に、その適用を示した。後掲上嶌論文は、大規模ビル火災事故を素材として、管理過失の理論的構造とその問題点を明らかにしたものである。後掲嶋矢論文は、改めて過失犯の共同正犯について、その判決の構造を分析し、典型例で適用される論理を実務における過失犯認定の手法と比較しながら明らかにし、その射程や射程外の課題について指摘を行っている。(3)刑事手続的側面における成果 後掲池田論文は、起訴状に記載すべき訴因の内容をなす「罪となるべき事実」をいかに特定するかについて,具体的な設例に基づき検討を加えたもので,過失犯の訴追においても参考となるべき知見を含む。さらに、宇藤学会発表において、刑事過失犯の訴因の明示・特定をめぐる問題につき、刑事実体法の理論動向を踏まえながら検討した成果を報告した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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野村稔先生古稀祝賀論文集
巻: なし ページ: 209‐230
法学教室
巻: 412号 ページ: 176‐177
川端博先生古稀記念論文集
巻: 上 ページ: 307‐334
巻: 上 ページ: 335‐365
西田典之ほか編・刑法判例百選I総論〔第7版〕
巻: 別冊ジュリスト220号 ページ: 118‐119
巻: 別冊ジュリスト220号 ページ: 162-163