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2013 年度 実績報告書

精神障害に罹患した犯罪行為者の処遇―刑事法と精神科医療、福祉との連携

研究課題

研究課題/領域番号 24330022
研究機関成城大学

研究代表者

山本 輝之  成城大学, 法学部, 教授 (00182634)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード触法精神障害者 / 刑事法 / 心神喪失者等医療観察法 / 地域精神医療 / 障害者福祉
研究概要

医療観察法は、触法精神障害者に対する処遇の全体を解決したものではない。たとえば、医療観察法が治療の主たる目標としていると思われる統合失調症に罹患した者であっても、①行為時に完全責任能力である、あるいは限定責任能力であるとして実刑を科された場合、②行為後に統合失調症を発症した場合、あるいは③そもそも医療観察法が定める6罪種に該当しない犯罪行為を行った等の事例について、なお刑事施設において処遇が行われている。しかし、刑事施設は医療機関ではなく、これらの精神障害者の治療にとって必ずしも適切な場とはいえない。これに対し、諸外国においては、行刑施設における医療のみでこのような精神障害者に対応しているのはまれであり、刑事施設と医療機関とが密接に連携することにより適切な処遇を行っている。そこで、平成25年度は、刑事司法・行刑と精神科医療との連携について、諸外国の例をも参考にしながら考察を行い、わが国において実現可能なモデルの構築について検討を行った。
また、わが国おいては、人格障害者あるいは依存症等による精神障害者については、責任能力が問題とされること自体がまれであり、多くの場合刑事施設において処遇されている。しかし、近年、このような者に対しても精神科による治療の必要性が認識され、刑事収容施設法、更生保護法がこのようなことを制度化している。このように、わが国おいてもこのような試みが行われるようになっているが、未だ十分とはいえないのが現状である。そこで、本年度は、このような者に対する治療提供のためのプログラムについて、諸外国で行われているそれをも参考にしながら、わが国おいて実現可能なモデルの構築について検討を行った。
また、本年度は、比較法研究として、アメリカ合衆国・ニューヨーク州を訪問し、そこにおいて刑事司法・行刑と精神科医療との連携がどのようになされているかを調査した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、精神障害に罹患している犯罪行為者であって心神喪失者等医療観察法による処遇の枠組みがなお必ずしも十分機能していない者について、こうした対象者全体に適用可能な処遇の法的モデルを体系的に提示することを目的とする、刑事法学・精神医学・障害者福祉という異なる学問分野からの融合的研究である。
本研究は、以下の3本の柱を軸として行っている。
(1)触法精神障害者処遇における精神科医療と障害者福祉との連携の在り方 とりわけ、地域における処遇のあり方に焦点を当て、ACT、アウトリーチなどの可能性を検討すること。(2)触法精神障害者処遇における刑事司法・行刑を精神科医療と連携の在り方 医療観察法の対象とならない精神障害者、とりわけ刑事施設に収容されている受刑者への処遇とケアの提供の在り方を検討すること。また、これと関連して、人格障害者、依存症患者等への適切なプログラムの提供の可能性についても検討すること。(3)触法精神障害者処遇における刑事司法・行刑と障害者福祉との連携の在り方 とりわけ、知的障害、発達障害、認知症等に罹患した犯罪行為者に焦点を当て、彼らの処遇の受け皿の確保等について検討することである。
以上の3本の柱のうち、昨年度は(1)について検討を行い、本年度は(2)について検討を行った。その点では、研究は、当初の計画に沿って順調に進展しており、その内容も充実したものであるということができる。ただ、当初の研究計画では、本年度の比較法的調査は、伝統的に手厚い社会福祉政策を採ってきたことで知られている、ニュージーランドの訪問調査を予定していたが、コーディネートがうまくいかず、アメリカ・ニューヨーク州の訪問調査に変更した。その意味で、障害者福祉の観点からの調査が未だ十分とはいえない状況である。このようなことから、自己点検として、「おおむね順調に進展している」という評価とした。

今後の研究の推進方策

知的障害、発達障害、認知症等に罹患した犯罪行為者の中には、精神科による治療が必要な者が含まれている。しかし、わが国においては未だ、そのための適切な受け皿が構築されているとはいえないのが現状である。そのため、彼らの社会復帰を図るための適切な処遇モデルを早急に構築する必要がある。そこで、平成26年度は、諸外国の例などを参考にしながら、刑事司法・行刑、精神保健福祉、障害者福祉の3者の連携という新たな試みを検討し、その具体的で実現可能なモデルを構築し提示する。
さらに、研究最終年度である平成26年度は、3年間の研究の成果を踏まえて、精神障害に罹患した犯罪行為者の指定入院医療機関内あるいは刑事施設内での処遇から社会復帰に至るまでの一貫した具体的な法的処遇モデルを体系的に構築し提示すること目指す。
そのため、平成26年度も引き続き、研究会活動、比較法的視点からの海外訪問調査を行い、年度後半では、さらに研究会を頻繁に開催し、それまで検討してきた、精神障害に罹患した犯罪行為者に対する処遇のあり方の全体を再度確認し、新たな法的処遇モデルの体系的構築に向けた議論を行い、それによって得られた成果を取りまとめ公表する予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度においては、海外訪問調査に参加した研究メンバーが当初の予定よりも少人数にとどまったため次年度使用額が生じることとなった。
研究最終年度にあたる平成26年度は、海外訪問調査を2か国で行った上で研究成果のとりまとめを行う予定であり、次年度使用額はこの費用に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 精神保健福祉法の改正について

    • 著者名/発表者名
      山本輝之
    • 学会等名
      法と精神医療学会
    • 発表場所
      立命館大学朱雀キャンパス
  • [学会発表] 責任能力における「精神の障害」-最近の動向を踏まえて

    • 著者名/発表者名
      水留正流
    • 学会等名
      法と精神医療学会
    • 発表場所
      立命館大学朱雀キャンパス
  • [図書] 精神保健福祉法改正2014

    • 著者名/発表者名
      山本輝之、吉岡隆一、岩成秀夫、八尋光秀、金田一正史、上野秀樹、川﨑洋子、大塚淳子、山本深雪、太田順一郎、岡崎伸郎、木太直人、池原毅和、良田かおり
    • 総ページ数
      208(47-59)
    • 出版者
      批評社

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公開日: 2015-05-28  

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