研究課題/領域番号 |
24330042
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
待鳥 聡史 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40283709)
|
研究分担者 |
川人 貞史 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10133688)
山田 真裕 関西学院大学, 法学部, 教授 (40260468)
建林 正彦 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (30288790)
奈良岡 聰智 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90378505)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 政党 / 選挙 / 議会 / 議場構造 / 国際情報交換(韓国) / 国際情報交換(台湾) / 国際研究者交流(カナダ) |
研究概要 |
3カ年にわたる本研究課題の2年目に当たる昨年度は、初年度から引き続いての海外調査や文献・資料等の収集作業と、研究成果の部分的な公表への着手という2つの活動を、並行して進めた。 まず海外調査については、平成25年9月にメンバー全員が韓国に出張し、国会立法調査処の専門家および国会運営に関する研究者への聞き取り調査および関係資料の収集を行った。前年度に調査を行ったイギリスとは異なり、韓国は戦後に国家建設が進められ、国会も1970年代に新規に建設されたという性格を持つ。このような、いわば歴史的制約が少ない議会において、議場構造や運営補助組織にどのような特徴が見られるのかについて、調査を進めた。議場設計当時の資料は国会にもほとんど残っていないとのことであったが、委員会室を含めた議場の物理的構造が審議に影響を与えている可能性については、当事者にも認識されていることが確認された。また、アメリカにおいて州議会を対象として議場構造の持つ意味を分析する研究が進められていることも、同時期に一部メンバーが参加したアメリカ政治学会における意見交換において明らかになった。このほか、研究成果の公表を見越して、カナダや台湾を含む国内外の研究者と、直接の面談などを通じて意見交換を行い、国際的な成果公表について一定の目処を得るに至った。 研究成果の部分的な公表については、本報告書の業績一覧にもあるように、議会・政党・選挙という本研究課題が扱う3つの主要テーマのいずれについても、一定の進捗を見ることができた。とりわけ、国際的な査読誌や編著への論文掲載が実現していること、および邦語での書籍出版が行われていることは、研究成果の国際的共有や社会的発信という点で、大きな意味を持つものだと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は、全体として見ればおおむね順調に進展していると考える。その理由は、以下の3点による。 1つには、政党、選挙、議会についての研究成果が順調に出ているためである。成果公表の方法も、国際査読誌への論文掲載、国際編著書への論文掲載、国内編著書の出版など、国内の研究者コミュニティに止まらない広い訴求力を持った媒体を使うことができている。海外研究者や実務家との情報交換に際しても、これら国際的業績を持つ本研究課題およびそのメンバーは認知されやすく、さらなる円滑な進捗につながるという好循環が見られる。 もう1つは、本研究課題の期間中における総括的な研究成果公表について、一定の目処が得られつつあるためである。すなわち、本研究課題のメンバーに、台湾など海外の研究者も加えた国際学会パネルを組むことがほぼ決まっている。国際学会パネルは応募段階で審査と選抜があり、それを通過したということは、本研究課題の意義について十分に説明できていることを示唆する。 しかし、「おおむね順調」という評価になっているのは、一部に必ずしも順調ではない部分が存在するためである。具体的には、議場構造や議会内会派に関するデータベースの作成が十分に進捗していない。これは、韓国調査などを通じて明らかになったように、議場構造については資料が存在しないケースも少なくなく、基礎的な情報や文献の収集に時間を要しているためである。日本の国会に関しては、近似した関心を持つ研究者との共同作業を進める見通しも立っていることから、資料の集成に向けた努力を継続していきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度から、最終年度に当たる本年度における推進方策としては、大きく以下の3つに分けられると考えている。 1つは、昨年度と同様に研究成果の公表を積極的に進めることである。研究代表者・分担者はいずれも、本研究課題に関連する研究成果を十分に挙げており、改めて督励する必要は感じないが、最終年度であることを意識して、代表者から本研究課題の取りまとめに当たる成果を出すよう促すことを予定している。また、代表者自らも参画して、本研究課題の複数のメンバーにより国際学会での発表を行うことになっている。この発表はそれ自体が本研究課題の最終成果の原型となるものであるが、学会での発表はいわばスタート時点に過ぎないともいえるため、発表論文を国際査読誌などに掲載することにも意を尽くしていきたい。 もう1つは、現時点までの進捗状況が必ずしも十分ではない、議場構造や議会内会派についての基礎資料の集成と公開作業の促進である。一昨年度および昨年度の調査や経験から、この作業が容易ではないことは認識しているが、たとえば日本の国会に限定して資料を集約し公開するなど、本研究課題の期間中に一部であっても成果が目に見える形にできるよう、メンバー間の協力態勢を構築していきたい。 また、3つめの方策として、本研究課題を出発点とした新たなプロジェクトの立ち上げについても検討したいと考えている。議場構造や議会内会派、議事補助諸制度の研究は国際的にも黎明期にあると考えられ、今後さらに大きな成果につながる可能性もある。メンバーとの積極的な意見交換を進め、次の研究プロジェクトにつながる手がかりを得たいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に次年度使用額が生じた理由は、購入予定であったいくつかの海外書籍の出版時期が遅れ、年度末納入に間に合わないことが発注前に確定したためである。代表者と分担者をあわせて5人の研究者からなる本研究課題の場合、1人あたり1~2冊の書籍や資料について出版の遅れが生じるだけで、6万6千円強の次年度使用額が生じることになる。 幸い、基金分の次年度使用ルールに極めて適合的な判断を行うことができ、かつ貴重な研究費の無駄を避けることができたと考えている。 次年度使用額が生じた理由において述べたように、平成25年度に発生した次年度使用額はいずれも公刊が遅れている書籍購入に充当することが予定されていた資金である。そのため、26年度前半には出版されると思われるので、それを購入するために用いられる。
|