研究課題/領域番号 |
24330060
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加納 隆 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90456179)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 為替レート / ランダムウォーク / 円ドルレート / アベノミクス / long-run risk / 時変的不確実性 / ニューケインジアンモデル |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績として、まず本研究課題である2国間開放経済不完備市場DSGEモデルのプラザ合意以後の円ドルレートへの応用論文が国際的な学術論文雑誌であるJournal of the Japanese and International Economiesに採択・掲載されたことがあげられる。その継続研究として、消費成長率とインフレ率の持続的要素とその時変的不確実性を認めた為替レートのlong-run riskモデルを円ドルレートへ適用し、アベノミクス後の円安と日米長期金利差の強い相関がアメリカの金融市場におけるリスクプレミアムの急激な高まりによってほぼ説明されてしまう可能性を提示した。この研究成果は、LSE-Hitotsubashi trade conference(11月), NBER-TCER-CEPR conference(12月), HKUST-Keio-HKIMR conference (3月), およびAJRC-HIAS conference (3月)といった国際的なコンファレンスで報告された。この論文は平成28年度カナダ経済学会(6月)とJIMF-Tokyo conference(7月)で報告された後、国際金融の世界的なトップジャーナルであるJournal of International Money and Financeへの投稿が要請されている。 また平成27年度は2国間開放経済不完備市場DSGEモデルの更なる理論的拡張を試み、価格の硬直性を認めた開放経済ニューケインジアンモデルに新たにトレンドインフレを導入した。この時価格硬直性の程度が十分大きくなると名目為替レートだけではなく実質為替レートもランダムウォークに近い動きをすることを理論的に示した。さらに名目為替レートと実質為替レートは一対一に動き、現実の為替レートデータを非常に上手く説明する事ができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は2国間不完備市場DSGEモデルにおける為替レートのランダムウォーク特性に関する研究の成果の一部が円ドルレートへの応用研究としてJournal of the Japanese and International Economiesに掲載された。またその継続研究は平成28年度にJournal of International Money and Financeに投稿要請を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
まずトレンドインフレを認めた2国間ニューケインジアンモデルを理論的に精緻化する。特に家計の効用関数を現在の対数型からCES型に一般化し、実質・名目為替レートのランダムウォークと2国間消費比率と実質為替レートの無相関という2つのデータ特性の同時的な理論的導出を試みる。さらに理論的な制約をDSGE-VAR法に当てはめ構造モデルの推定を行い、為替レートの予測精度が理論モデルの制約で向上するのかどうか実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたコンピュータの物品購入の必要がなくなった。また海外から研究者を招聘予定だったが、先方の都合がつかなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
海外研究者を招聘予定。またデータの打ち込み作業等の研究補助に人件費支出予定。
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