研究課題/領域番号 |
24330062
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50227112)
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研究分担者 |
鈴村 興太郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00017550)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経済理論 / 選択理論 / 合理性 / 限定合理性 / 評価基準 |
研究概要 |
個人的選択にせよ、社会的選択にせよ、単一の評価基準に従って為されることは稀であり、しばしばその選択は複数の評価基準に照らして行われる。たとえば、個人は単に物質的満足を追求するだけでなく、社会的な義務感やモラルなどに従って行動することがある。社会的選択においては、資源配分の効率性だけでなく、衡平性が考慮される。本研究は、このような複数の評価基準に基づく意思決定が、選択の合理性ないし限定的な合理性の観点から、いかなる特性を持つのかを解明することを目的としている。 平成25年度は、第1に、一方の評価基準をまず適用し、次に他方の評価基準を適用するという「辞書式結合」による選択を考察した。特に、強選好関係の評価の循環が生じる場合には、第二の選好順序の適用を一部分で控えるという方法を「条件付辞書式結合」と呼び、その公理的分析を行った。選択関数の特性(公理)として、単純なケースにおける直観的に「自然な」選択を表現する幾つかの特性と、選択の限定合理性を表す公理を導入し、条件付辞書式結合に基づく選択関数が、これらの特性の組を満たす唯一の関数であるか否かを分析した。 第2に、選択肢をグループ分けした上で、各グループにおいてまず選択し、その「予選」を勝ち残った選択肢の中から最終的に選択する、という自然な選択の方法を「グループ分け選択方法」と定義し、これに基づく選択関数の公理的分析を行った。グループ分け選択方法と、複数の評価基準の辞書式結合よる選択方法とは、論理的に近い性質を持つものと予想し、2つの選択方法が共に満たす特性(公理)について考察した。その結果、2つの方法は共に、選択肢の集合の拡張に関する整合性と、選択肢の集合の縮小に関する限定された整合性を満たすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、複数の評価基準の下での意思決定方法として「条件付辞書式結合」を導入し、この方法が満たす幾つかの特性(公理)を明らかにした。また、選択の合理性・限定合理性に関する特性の含意を解明した。条件付辞書式結合に基づく選択関数が、これらの特性の組を満たす唯一の関数であるか否かという問題に関する分析にも、大きな進展が見られた。一方、「グループ分け選択方法」を定義し、この選択方法と複数の評価基準の辞書式結合よる選択方法とが共に満たす幾つかの特性を明らかにした。 本研究は、純粋に理論的な研究であるため、外的な環境や設備などの問題で研究の阻害要因となるものはない。 以上より、複数の評価基準の下での合理的・限定合理的選択に関する理論的分析は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究代表者と研究分担者は、海外の研究協力者等も含めて、密接な情報交換と討議を行いつつ、理論的分析を進め、論文を作成し、国内外の学会等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年6月にアメリカで開催されるSociety for Social Choice and Welfare の世界大会で論文発表を行うこと、また、海外の研究協力者の都合により、訪問して共同研究を進める時期を平成26年度に延期したことにより、その出張旅費として、平成25年度の助成金の一部を繰り越すこととした。 平成26年度の研究費と合わせて、国内外の学会出張と共同研究のための旅費にウエイトを置いた使用を計画している。
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