研究課題/領域番号 |
24330067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
縄田 和満 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00218067)
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研究分担者 |
川渕 孝一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10308934)
近藤 暁子 東京女子医科大学, 看護学部, 准教授 (70555424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経済統計 / DPCデータ / 医療政策 / 医療経済 / 計量分析 / 白内障 / 糖尿病 / 在院日数 |
研究概要 |
平成25年度は、前年度までに引き続き、東京医科歯科大学大学院医療経済学分野によってこれまで(全国各地の病院から収集されたデータによって)構築されてきたデータベースに新たに得られたデータを加え、その整備・拡張を行なった。併せて,データベースをより使いやすくするための改良、そのためのプログラム開発をおこなった。 次に、分析用モデルの研究・開発を行なった在院日数のようなデータの分析には、Box-Cox変換モデルなどが幅広く使われているが、このモデルは一致推定量とならないなどの問題点がある。平成25年度は、これらの問題を解決する新たな推定量を提案し、また、Box-Cox変換モデルの妥当性に関する新たな検定方法を提案し、モデルの推定・検定のための仮定・コンピュータプログラムの開発を行った。 さらに、これらの成果に基づき、医療データ分析・評価・医療政策への提言に関する研究を行なった。具体的には,まず、2006年度の診療報酬改定にともなうDPC/PDPSの白内障の在院日数への影響の分析を行った。次いで、糖尿病における在院日数の分析をおこなった。また、糖尿病は、他の疾病と異なり、通常の治療目的の他、入院目的が教育のための入院患者が多数存在する。これらの特徴を踏まえた分析も重要となっている。しかしながら、白内障や糖尿病の在院日数に影響を与える要因の分析はほとんど行われておらず、限られたものとなっており、多数の病院の患者のデータを使った、より複雑な計量モデルによる分析はほとんど行われていなかった。平成25年度に行なった研究は、多数の病院から得られた大規模個票データを使った数少ない研究となっており、医療資源の効率的な利用のためも大きな成果をあげたものと考えられる。 これらの成果は、合計11編(内査読付き論文8編)や5回の学会発表などとして公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、前年度に引き続き、東京医科歯科大学大学院医療経済学分野によってこれまで(全国各地の病院から収集されたデータによって)構築されてきたデータベースに新たに得られたデータを加え、その整備・拡張を行なった。併せて、データベースをより使いやすくするための改良、そのためのプログラム開発を行なった。このデータベースは数十万人以上の患者のデータが保存されており、我が国の医療の実態を知る上で貴重なものとなっている。 次に、分析用モデルの研究・開発を行なった。例えば、在院日数のようなデータ、歪度・尖度が大きな値になるなど、長期間入院する一部の患者が存在する右側に裾の厚い分布となっている。このため、単純な最小二乗法などを使った分析は適当でないと考えられ、Box-Cox(1964)変換モデルなどのモデルが幅広く用いられる。しかしながら、Box-Cox変換モデルには、推定量が一致性を有しないなどの問題があることが知られていた。本研究では、このモデルの再評価を行い、一致性を有する推定量を新たに提案した。また、Box-Cox変換モデルの有用性に関する検定方法を新たに提案した。これらは、計量経済学・統計学の分野における大きな貢献であると考えられる。 さらに、作成されたデータベース、分析モデルを使って、白内障や糖尿病患者の在院日数等の実証分析を行った。人口の高齢化に伴い、我が国の医療費は増大しており、効率的な医療資源の配分・使用は大きな政治課題となっている。この点においても、本研究は、新たな包括支払制度であるDPC/PDPS導入の影響、さらに、その改定の影響等を分析しており、重要な成果をあげていると考えられる。しかしながら、分析対象とした傷病が限られたものとなっており、分析対象を可能な限り社会的に影響の大きい他の傷病へ広げる必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに引き続き、東京医科歯科大学大学院医療経済学分野によってこれまで(全国各地の病院から収集されたデータによって)構築されてきたデータベースに新たに得られたデータを加え、その整備・拡張を行う。併せて、データベースをより使いやすくするための改良、そのためのプログラム開発を行う。 次に、Box-Cox変換モデル等の分析用モデルの研究・開発を行い、その問題点の解消の研究を続ける。 さらに、これらの成果に基づき、医療データ分析・評価・医療政策への提言に関する研究を引き続き行う。具体的には、白内障・糖尿病の在院日数や治療成果についての分析を行う。白内障や糖尿病の入院患者の医療費のかなりの部分は、在院日数に依存する。しかしながら、在院日数に影響を与える要因の分析はほとんど行われていない。すでに述べたように、これまでの研究は、限られたものとなっており、多数の病院の患者のデータを使ったより複雑な計量モデルによる分析はこれまで行われていない。また、他の疾病と異なり、糖尿病においては、通常の治療目的の他、入院目的が教育のための入院患者が多数存在する。例えば、同等の教育を他の手段(外来における講習等)で行った場合の費用対効果の分析等も重要であるが,この研究もこれまで行われていない。今年度はこれらについてのいて引き続き実証分析を行う。また、可能な限り対象とする傷病を脳梗塞やくも膜下出血などの脳疾患、心筋梗塞などの心疾患等、社会的に影響の大きい他の傷病へ広げる。 また、平成26年度は、本研究の最終年度であるので、これまで分析対象とした対平成26年度は、これまでに対象とした個々の傷病のみならず、これらを総合的に評価し、さらに、各種の専門家のDPC制度の評価、諸外国の制度(例えば米国のDRG/PPS)との比較地域間の病院の適正な配置といった問題に対して提言を行う。
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