研究課題/領域番号 |
24330070
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
馬奈木 俊介 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70372456)
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研究分担者 |
乾 友彦 日本大学, 経済学部, 教授 (10328669)
日引 聡 上智大学, 経済学部, 教授 (30218739)
鶴見 哲也 南山大学, 総合政策学部, 講師 (50589364)
岩田 和之 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90590042)
枝村 一磨 文部科学省科学技術・学術政策研究所, 調査研究部門第2研究グループ, グループ研究員 (20599930)
伊藤 豊 広島大学, 国際協力研究科, 助教 (00633471)
田中 健太 武蔵大学, 経済学部, 講師 (30633474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エネルギー需給モデル / 全要素生産性 / 排出権取引市場 / 原油価格 / 産業分析 / 貿易自由化 / エネルギー政策 / グリーンイノベーション |
研究概要 |
本プロジェクトは今後の経済成長戦略、温室効果ガスの排出量及びエネルギーセキュリティーなどを考慮した総合的なエネルギー・ポートフォリオの構築を目的とし、主に3つの観点から分析を行う。 本研究では世界のエネルギー需給についてマクロレベルで詳細な分析が可能であるIEA世界エネルギー需給モデルを拡張し、日本のエネルギー需給モデルを推計する。このため「エネルギー消費統計調査」「企業活動基本調査」「工業統計調査」等のミクロデータを用いる。最終的には推計された日本のエネルギー需給モデルを用いて、複数のシナリオ分析、各シナリオにおける最適なエネルギー・ポートフォリオの検討、提案を行う。省エネルギー技術・再生可能エネルギー技術の進展は、特許データ「IIPパテント・データベース」を用いて補足する。 そこで本研究では近年、我が国が経験している様々社会・経済インパクトがどのように産業構造の変化とその調整速度にどのような影響を与えるか分析を行う。IEAエネルギー需給モデルに分析結果を組み込み、現在及び今後の産業構造変化が日本のエネルギー需給に与える影響を推計する。そのために、「生産動態調査」「企業活動基本調査」「工業統計」等の個票データを活用する。 Akiyama & Hosoe (2011)による9地域空間均衡モデルを用いて、原子力発電所の停止がもたらす種々の影響について分析する。最終的には現在の我が国の電源構成により引き起こされる種々の影響がどの程度、経済に影響を与えるか応用一般均衡モデルにより分析する。また前述の産業構造の変化を加味したエネルギー・ポートフォリオに基づいた電源構成、経済状況における電力価格の変化や、それに伴った経済活動の変化を分析し、適切なエネルギー・ポートフォリオの設定による経済や社会への影響を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
継続的な研究活動により、研究成果は着実に上がってきている。RIETIディスカッション・ペーパーに2本の論文を発表し、書籍においても研究論文を掲載した。学会発表もいくつか行っている。 特に森田玉雪・馬奈木俊介「東日本大震災後のエネルギー・ミックス-電源別特性を考慮した需要分析-」ではウェブ調査により2011年の東日本大震災を挟む家計の節電行動およびエネルギー選好の変化を明らかにし、今後の家庭用エネルギーに対する政策方針の在り方を提言する。東日本大震災以降の電力供給への不安による家庭用エネルギー需要の質的量的な変化は、代替的に自然エネルギーへの国民の関心を高めた。本研究調査により、再生エネルギーの比率を高める政策に対して人々は最大6%強の電気代の上昇を受け入れる余地があることが判明した。政府は、このような電源別エネルギー・ミックスに係る消費者の需要も考慮して、エネルギー転換を進める必要があることを提言している。調査により具体的な数字を根拠に需要まで考慮してエネルギー・ミックスについて提案を行っている研究はこれまで新しく、政策形成の観点から特に重要な研究であると考えられる。 田中健太・松川勇・馬奈木俊介による排出権取引に関する研究は日本のエネルギー政策、温暖化防止政策への提言および資源経済学・環境経済学・産業組織論の発展への寄与という本研究の目的に特に重要である。産業組織論において重要なモデルである市場支配力が存在する双方向取引市場は排出権取引市場のモデルとして適当であり、このモデルと完全市場におけるマーケットパフォーマンスを実験により比較している。これは排出権取引市場がどれだけ有効か知る上で不可欠な情報であり、実際に市場開設を検討する際に有力な研究となる。 一方でデータの整備は予定よりも遅れており、これを利用した研究はいまだ進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には交付申請書の研究の目的および研究実施計画通りに研究を推進する。「生産動態調査」「企業活動基本調査」「工業統計」などのデータ整理・個票パネルデータの構築を引き続き行う。この際異なるデータセットの名寄せ作業も合わせて行う。これにより事業所レベルの個票のパネルデータは事業所、企業、産業が消費するエネルギーの情報が含まれることになる。パネルデータを用いて産業構造変化の状況を定量的に把握する。 この結果を日本エネルギー需給モデルに組み込み、日本のエネルギー需給の変化を推計する。各エネルギーの需給を総合的に分析できる日本のエネルギー需給モデルを構築・推定する。エネルギー需給モデルを、データを最新のものに更新して推定し直し、直近の状況の描写できるようにする。現実データと照らし合わせてモデルの再現性を確認する。 産業の構造変化による事業所・企業活動の変化、産業構造の変化が、エネルギー需給にインパクトを与えているか否かを分析する。もしインパクトを与えている場合、その程度を定量的に測定する。 そのうえでシミュレーション分析を行う。様々なシナリオを用意して分析を進める。原発停止後の状況(現状の電力価格やエネルギー資源の動向)を加味したうえでのエネルギー需給動向を分析する。省エネルギー技術と再生可能エネルギー技術などグリーンイノベーションの日本のエネルギー需給に与える影響や効率性も分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
データの整備は予定よりも遅れており、データ整備のための人件費などを使わずに次年度に繰り越すことになった。 人件費については、ポスドク雇用と資料整理のためのアルバイト謝金からなる。国際学会参加のための旅費で、学会参加費を見込んでいる。また、論文2本を投稿するため、英文校閲費を予算として計上した。
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