研究課題/領域番号 |
24330074
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
神林 龍 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (40326004)
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研究分担者 |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 賃金格差 / 自営業 / 非正規雇用 |
研究概要 |
本研究の目的は、近年の日本の所得・賃金格差の実態を実証的に明らかにし、その経済学的メカニズムを探究することにある。そのために、政府統計の個票を事業所レベルでマッチングさせ、ミンサー型賃金関数の推定に事業所属性を取り入れることを基本とする。 平成24年度は研究計画通り、統計法33条に従って厚生労働省『賃金構造基本統計調査』(以下、賃構と略す)、『雇用動向調査』、『労使コミュニケーション調査』、『就労条件総合調査』の4つの調査の個票について利用する許可を得た。この利用許可は、総務省『経済センサス』の名簿情報に基づき、4つの調査が事業所レベルで連結可能な形で得られている。利用許可申請と並行して、賃金格差を考察する上で基本データとなる賃構の性質を、総務省『就業構造基本調査』や厚生労働省『毎月勤労統計調査』と比較することで確認した。近年、賃構にはいくつか問題点があり、賃金格差を考察する上では適切ではないのではないかという批判が提起されている。第一に、被用者のサンプルプロセスの問題から非正規労働者を過小捕捉しているという点、第二に5人未満の事業所が除外されている点、そして第三に2005年の調査票の変更に伴い統計の不連続が生まれているという点である。分析の結果、非正規労働者の過小捕捉は一定程度存在するものの、その一部は正規労働者としてサンプルに格納されている可能性が確認され、賃金分布そのものに影響を及ぼすほど顕著ではないことがわかった。また、5人未満事業所が除外されることで、賃金分布の左裾が数%ポイント分シフトしている可能性があるものの、5人未満事業所をカバーする世帯調査の測定誤差はそれ以上に大きく、賃構は利用可能な中で望ましいデータであることも指摘された。さらに、2005年改正の影響は集計値ではそれほど顕著ではないことが確認され、全体として、賃構が賃金格差を議論するために適切なデータであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者であるSebastien Lechevalier, Tor Ericksson, Takao Katoの3氏の平成25年4月からの日本滞在にあわせて、当初の目的である『賃金構造基本統計調査』『雇用動向調査』『労使コミュニケーション調査』『就労条件総合調査』の利用許可が下り、3氏の滞在中にデータ分析が可能になった。また、『賃金構造基本統計調査』のデータ上の頑健性が確認され、研究の準備が整ったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、賃金格差における事業所属性の役割について分析を続け、世帯条件の変化についても研究の端緒をつける。利用許可が下りた4つの調査の個票を事業所レベルでマッチングし、ミンサー型賃金関数の推定を行う。また、『労働力調査』や『就業構造基本調査』といった世帯調査の個票利用について担当省庁との交渉を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者であるSebastien Lechevalier, Tor Ericksson, Takao Katoの3氏の日本滞在が平成25年4月からとなり、平成25年11月頃に国際コンファレンスを計画していることから平成24年度に配分された研究費を一部平成25年度に繰り越している。
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