研究課題/領域番号 |
24330075
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
森口 千晶 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40569050)
|
研究分担者 |
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 養子 / 家族の経済学 / 経済史 / 日米比較 / 児童福祉 / 国際情報交換 / 国際研究者交流 / アメリカ |
研究概要 |
本研究では「家族の経済学」の枠組みを用い日米の歴史データを駆使した養子の実証分析を行う。本研究は、①アメリカにおける養子縁組の長期的変遷、②同国における実子・養子の人的資本形成の比較、③日本における養子縁組の長期的変遷、の3プロジェクトから構成される。平成25年度の研究成果は次の通りである。 第1プロジェクトでは、平成24年度に作成した1880~1930年と2000年のアメリカ国勢調査個票の養子データセットを用いて実証分析を行った。第2プロジェクトの短期的分析に当たる実子・養子の教育水準の比較も行い、20世紀初期と終期では両者の関係が逆転したなどの新たな知見を導いた。これらの結果を論文にまとめ、国内や韓国で研究発表を行い、高く評価を受けた。成果の一部はすでに査読付き学術誌に掲載されている(森口 2014)。 第2プロジェクトでは、海外研究協力者のJohn Parman氏と共に、アメリカ国勢調査の1910年と1940年の個票を用いたパネルデータの構築を進めた。およそ2000人の養子について連結作業を完了し、兄弟についてのデータ収集に着手した。また、連結されたデータを用いて成人期の養子の属性を実子と比較し、初期の分析結果を全米経済史学会の2015年度大会のセッションに投稿し受諾された。 第3プロジェクトでは、研究分担者の野口晴子氏と共に、司法統計年報・戸籍事件簿・人口統計・社会福祉施設調査などの政府統計からデータを収集・入力し、1950~2013年の都道府県別パネルデータを構築した。図を作成して都道府県別の趨勢の比較も行った。また、スタンフォード大学アジア太平洋研究所に招かれて日米の養子制度に関する講演を行い、さらに国内では養子縁組に携わる実務家・ジャーナリスト・編集者も招いて『養子制度と児童福祉の比較史』のシンポジウムを開催し、自らはアメリカの養子制度についての報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1プロジェクトについては、重要な分析結果が得られ、セミナーや学会での報告のみならず、学術誌にも成果を発表するなど、当初の計画以上の大きな進展がみられた。第2プロジェクトについては、データ構築が予定通りに進み、平成26年度の全米経済史学会での研究報告がアクセプトされるなど、順調な進展がみられる。第3プロジェクトについては、計画通り、海外での講演やシンポジウムの開催などによって日米比較の研究成果を広く社会に発信した。遅れていた都道府県別データの収集についてはパネルデータの構築が完了した。以上を総括すれば、計画に沿って順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度には以下のように研究を推進する。 第1プロジェクトでは、1930年5%標本や2010年標本を用いてさらに観察数を増やし、より高度な実証戦略を練り、養子世帯の決定要因と養子・実子の教育格差の理由に関する精緻な実証分析を推進する。その成果の一部は日本経済学会の春期大会の招待講演において報告される。さらに、最終的な結果を英文の論文にまとめ、海外学術誌に投稿する。 第2プロジェクトでは、パネルデータの構築を継続しつつ、John Parman氏と共に養子・実子の長期的アウトカムの比較分析に取り組む。分析においては、世帯属性をコントロールした養子・実子の比較に加えて、同一世帯の兄弟の比較や単親世帯の実子との比較分析も行う。本年度は長期間アメリカを訪問し、Parman氏との共同研究を推進するとともに、全米経済史学会(Economic History Association Meeting)を皮切りに欧米の学会や主要大学のセミナーで研究発表を行い、専門分野の研究者から示唆を受けて論文を改訂し、海外学術誌への投稿を準備する。 第3プロジェクトにおいては、野口晴子氏と共に、都道府県別パネルデータを用いて日本における養子縁組数の減少理由を解明する実証分析に取り組む。その成果をディスカッションペーパーにまとめ、国内の学会や研究会で発表し、成果の発信に努める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が発生した理由は主として以下の3点による。①養子縁組に関する都道府県別データの収集・入力において、経済研究所の大型計算機室に作業を依頼したために、当初に予定していた人件費が必要なくなり未使用額が発生した。②共同研究を進めるために海外研究協力者のJohn Parman氏を北米から招聘する計画だったが、E-mail、SkypeおよびDropboxの活用によって十分な打合せや情報交換を行うことが出来たため招聘の必要がなくなり未使用額が発生した。③北米出張にエコノミークラスを利用したため、旅費が予定額を下回り未使用額が発生した。 これらの未使用額は平成26年度の研究資金とあわせて、主として、① アメリカ国勢調査個票データの容量が非常に大きいため、その解析をより早く行うことが出来る高性能のデスクトップ・コンピュ―ターおよびその関連機器を購入する費用、②国勢調査個票データ連結によるパネルデータ構築を継続して行うための研究補助費、③アメリカにおける共同研究および海外の学会やセミナーにおいて研究発表と意見交換を行うための旅費、に使用する予定である。
|