研究実績の概要 |
最終年度である平成26年度には、アメリカにおける養子の分析を中心に、多くの成果を挙げることができた。まず、経済史としては初めて日本経済学会の招待講演に招かれ、本研究の成果を発表し、聴衆と活発な質疑応答を行い、大きな反響を得た。この報告を基にした論文は査読を経てJapanese Economic Reviewに掲載される予定である。 次に、本科研費に加えて日米教育委員会のフルブライト奨学金を得ることができたため、八月から客員教授としてスタンフォード大学に十ヶ月間滞在し、すばらしい研究環境に恵まれた。同大学では、Alvin Roth, Avner Greif, Paul David教授を始めとする一流の経済学者と交流を深め、毎週開催される経済史セミナーではWalker Hanlon, Suresh Naidu氏など多くの若手研究者とも知り合い、世界の最先端の研究に触れ、新しい着想や分析手法を学ぶことができた。また、オハイオで開かれたアメリカ経済史学会、イスタンブールにおけるアジア歴史経済学会、ボストンにおけるNBER学会等にも参加し、世界各国の研究者と積極的に意見交換を行った。 さらに、国勢調査個票を用いた1880~1930年の養子・継子・実子の比較研究では、標本数を増やしてより精緻な実証分析を遂行し、その結果をアメリカの主要大学(Stanford, Arizona, Harvard, Michigan, Northwestern)で発表し、Price Fishback, Claudia Goldin, Paul Rhode, Joseph Ferrie教授などから有益な示唆を得た。また、海外学術誌への投稿するために、これらの成果を2本の論文にまとめ、数度の改訂を行った。 最後に、養子・実子の成人期の比較研究では、海外研究協力者のJohn Parman氏と共に養子約五千人のパネルデータの構築を進めつつ、初期の分析結果を共同論文にまとめ、アメリカ経済史学会で報告した。入力作業に多大な労力を要したが、3月に予定していたデータセットの構築が完了し、本格的な実証分析に着手することができた。
|