本研究は、開発途上国の経済発展において社会ネットワークがどのような役割を果たすかについて、エチオピア、インドネシア、ベトナムの3か国を対象として分析するものである。2015年度には、2014年度までに収集した農村世帯・企業のデータを利用して、次のような結果を得た。 まず第1に、インドネシア農村において、農村内の密なつながりと農作物の貿易商などの外部とのつながりの両方がある村において、もっとも広範に農業技術が伝播することが見出された。この結果は、農村発展における社会関係資本(農村内の強い絆)の重要性を唱えるこれまでの研究の結果に対して若干の問題点を指摘するものである。第2に、インドネシアの製造業において、企業と政治家とのつながりが企業の閉鎖性を強化し、資源配分を歪めてしまうことを実証的に示した。第3に、ベトナムの中小企業の産業集積において、情報交換ネットワークが企業の意思決定に影響を与え手いることを示した。これは、ネットワーク構造によってさまざまな産業発展の経路がありうることを実証的に示唆している。最後に、エチオピアの地方都市の縫製業の集積地において、企業間ネットワークが技術レベルに性の影響を及ぼすことを見出した。 これらの結果は、共同体内での強い絆と共同体外とのつながりが、さまざまな経路で開発途上国の経済発展に作用することを示している。これらの成果は、査読付の国際学術誌や国際学会などで発表された。
|