本研究は、独禁法違反事件に係る審判決を素材として、日本の競争政策の判例法的展開を、産業組織論の視点から分析・評価するものである。具体的には、経済学者と法学者・実務家が共同して独禁法審判決事例を研究することによって、①審判決の違法性判断基準のもつ含意を理論的に分析し、厚生上の帰結を明らかにすること、また、②違法性判断の前提となる事実認定の妥当性を実証的に検討すること、の2点を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、経済学者・法学者・弁護士・実務家22名をコア・メンバーとする「独禁法審判決研究会」を全7回(4~7月、10~12月の各月)実施した。また、平成26年6月の研究会では、公共工事入札における談合認知の手法について、東北大学経済学研究科・中林純准教授より研究報告を受けた。平成26年8月31日~9月1日には、北海道大学法学部・田村善之教授の知的財産制度研究会との共催による研究会を実施し、知財高裁によるアップル対サムソン事件判決を素材として知的財産法と競争法の関係について活発な意見交換を行うことができた。特に特許に係る取引拒絶やFRAND条件に関する最新の研究動向について理解を深めることができた。また、平成26年12月には、著名な米国の法律実務家であるJames Venit氏および京都大学法学研究科・早川雄一郎氏より、Intel事件のEUの最新の判決についてご講演を頂き、排除行為の違法性について活発な意見交換を行うことができた。平成27年3月には、神奈川県葉山にて、独禁法審判決の法と経済学の研究成果についてコンファレンスを行った。東京大学出版会より平成27年度中に研究プロジェクトの成果を出版できるように準備を進めているところである。
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