研究概要 |
本研究の目的は,戦後ロシアについて(1)マクロと産業別のGDP長期成長経路(1950-2014年)を推計・整備すること,(2)成長要因を生産要因と石油価格・交易利得要因について時系列分析すること(特に外生要因であるトレンドや全要素生産性TFPの作用に注目する),(3)国内・国際産業連関構造を通時的・横断的に明確にし,それらを経済発展プロセスとリンクさせて産業連関分析すること,(4)国際比較分析とシミュレーションにより,油価変動やロシア輸出・輸入変動の他国への波及効果と製造業輸出振興政策feasibilityの検討のための基礎情報を与えること,以上の4つである. 平成24年度は,まず,戦後1950-1990年のロシアGDP遡及統計について推計を整備した.生産関数を推定し,成長会計分析を行い,資本蓄積・雇用・全要素生産性TFPの寄与をBRICs諸国(ブラジル,ロシア,インド,中国)ならびにインドネシア,マレーシアについて計量的に明確にした.BRICsならびにインドネシア,マレーシアについては,生産関数と油価関数の両者を推定し,さらにTFPと,油価方程式のトレンドの比較検討を行った.インドネシアについては石油輸出国から輸入国に2000年代に転換したことに注意して分析を行った.本研究では,ロシアの2005年25内生部門産業連関表統計を整備し,国内産業構造・産業連関を分析した.特に輸出の付加価値誘発効果に注目して分析を行った,本研究では,さらに貿易リンケージを重視した2005年BRICs国際産業連関表(BRICs4ヵ国ヶ国にEU25ヵ国集計表,米日2ヵ国の7地域を対象)を整備し,それを用いた付加価値貿易の準備研究を進展させた.特にロシアとEUの国際的産業連関関係の分析を進展させた.以上の試みはいずれも先駆的な試みで国内外学会発表により学界において重要性と意義が認知されつつある.
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次年度の研究費の使用計画 |
海外研究協力者との研究打合せのために北米出張を予定していたが、E-mailやSkypeの活用によって十分な打合せと情報交換を行うことが出来たため、出張の回数を当初予定より減らすことが出来た.また,統計整備に関する作業については、平成24年度は研究補助を必要としなかった.このため発生した未使用額は,平成25年の研究費とあわせて,主に(1)海外研究協力者との研究打合せのための招聘旅費,(2)欧米の学会での研究成果発表を行うための諸費用,(3)ワークショップ開催のための会議費及び招聘旅費,(4)広く成果を公開するための広報用パンフレット作製費用,等に充てる.
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