研究課題/領域番号 |
24330093
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坂田 圭 立命館大学, 経済学部, 教授 (60346137)
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研究分担者 |
McKenzie Colin 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (10220980)
梶谷 真也 明星大学, 経済学部, 准教授 (60510807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 認知能力 / 健康 / 引退 / 労働時間 |
研究実績の概要 |
Household Income and Labour Dynamics in Australia (HILDA) Surveyを用いて、壮年労働者および高齢労働者の労働時間が認知能力にどのような影響を与えるのかを実証分析した。先行研究では、高齢者が引退を遅らせ、継続就労することにより、認知能力の低下を防ぐことができるかについての分析が数多くなされている。しかし、労働時間が認知能力にどのような影響を与えるのかに注目した分析は、まだ研究が進んでいない。働くことは、脳を活性化させるため、認知能力の低下に対して有効的であるという研究成果がある一方で、長時間労働は、疲れやストレスを発生させる。認知心理学や医療の分析では、疲れやストレスは認知能力に負の影響を与えることが指摘されている。つまり、労働時間と認知能力の間に存在する関係が非線形である可能性がある。そこで、本研究では、労働時間が認知能力にどのような影響を与えるのか、認知能力にとって最適な労働時間が存在するのかについて実証的に検証した。推定に関しては、認知能力の高い人が長時間労働になり、認知能力の低い人が短時間労働になるという逆の因果関係の可能性を考慮する必要がある。本研究では、このような内生性を考慮した推定を実施した。その結果、壮年層、高齢層の労働者について、労働時間が認知能力に与える正の効果は25時間でピークになり、それ以上の労働はピークに比べ認知能力を徐々に減少させていくことがわかった。また、男女間でこの傾向に差があるかの検定を実施したが、男女間で統計的な差がないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、新たにオーストラリアのパネルデータを使用し、労働時間と認知能力についての研究を進めた。研究成果は、これまでに国内外の学会やセミナーで報告し、いただいたコメントやフィードバックを論文に反映させた。これまでに執筆した二つの研究成果に関しては、海外学術雑誌に投稿を終えてる。"Occupation, Retirement, Cognitive Functioning"は、今年度、2回目の改訂要求に対応し、Ageing & Societyから掲載採択の通知を受けた。もう一つの研究成果である“Use it Too much and Lose it? : The Effect of Working Hours on Cognitive Ability”は投稿を終え、レフェリーからの改訂要求を待っている。 また、この論文は、European Society of Population Economics Meeting (Berlin)に採択され、報告の機会を与えられている。
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今後の研究の推進方策 |
“Use it Too much and Lose it? : The Effect of Working Hours on Cognitive Ability”については、今後も学会やセミナーで報告し、フィードバックをまとめる。既に投稿を終えた二本の論文について、レフェリーからの改訂要求が届き次第、改訂作業を進める。また、新たに、高齢層と壮年層の労働時間が健康に与える影響についても分析も進めていく。この研究では、男女間に差が存在するのかについても分析する。論文の執筆が終わり次第、国内外の学会やセミナーで報告し、投稿準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
外研究中に現地にて物品を購入できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費に充当する.
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