研究課題/領域番号 |
24330094
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
稲葉 大 関西大学, 経済学部, 准教授 (50611315)
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研究分担者 |
奴田原 健悟 専修大学, 経済学部, 准教授 (30553672)
宮澤 健介 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80609826)
山田 潤司 富山大学, 経済学部, 准教授 (10633993)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミディアム・タームな景気循環 / R&D / バブル / 財政 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトは,理論・実証の双方向を用い,税制・財政・金融制約の視点から,ミディアム・タームな景気循環メカニズムの解明を試み,総合的に分析・検証するものである.主要な研究実績は以下の5つである. 1) Kengo Nutahara, “Laffer curves in Japan,”forthcoming in The Journal of the Japanese and International Economiesでは,日本の労働税・資本税・消費税の各税率と総税収の関係(ラッファー曲線)を推計した.昨年の研究成果をもとに各税の限界税率の再計算を行った上で再推計し,頑健性の確認を行っている. 2) Ryo Jinnai,“R&D Shocks and News Shocks,”Journal of Money, Credit and Banking, 46, 1457-1478, 2014.本論文では,ニュースショックが研究開発部門の技術進歩(又は停滞)としての役割を持つために生産性の予測が可能だとする理論モデルの定式化を行った.さらにシミュレーション結果により実証研究の結果との整合性を確認している. 3) 山田潤司「機動的な財政政策と財政赤字」日経研月報2014年12月号では,一般均衡世代重複モデルを用いて日本の財政状況のシミュレーションを行った.アベノミクスが望ましい効果をあげようとも,国債利払費の上昇や年金・医療費支出の伸びがその効果を打消し,財政状況の劇的な改善は困難であることを明らかにした. 4) Masaru Inaba (with Tomohiro Hirano and Noriyuki Yanagawa), “Asset Bubbles and Bailouts.”本稿はKiyotaki-Moore型の金融制約のあるモデルにおける合理的バブル均衡において,政府による救済が生産と経済厚生に及ぼす影響を考察したものである.継続中の研究であり,海外での複数の研究報告を行い改訂を続けている. 5)「DSGE コンファランス2015」(台湾国立大学, 2015/03/13)を共催し,新谷元嗣氏(東京大学)を招聘し講演していただいた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミディアム・タームな景気循環メカニズムの解明のため,以下の視点から十分な成果を得ており,概ね順調に進展していると判断した. 第一に,財政の観点から,日本経済における中長期的な問題を考察した研究である.日本経済においてラッファー曲線を推計した研究はNutahara (2014)としてJournal of the Japanese and International Economiesに掲載された. 第二に,ニュースショックが中期的な景気循環に与える影響を考察したJinnai(2014)は,Journal of Money, Credit and Bankingに掲載された. 第三に,合理的バブルの崩壊に対する政府の救済策が経済厚生に与える影響を明らかにしたHirano, Inaba, and Yanagawa (2014)は,海外の大学やカンファレンスに招かれ研究報告を行い,順調に改訂を続けている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を精緻化・情報発信をするとともに以下の4つを中心に研究を進める。 1) 研究代表者の稲葉が中心となり,Hirano, Inaba, and Yanagawa (2014)の研究報告を国内外で行い,査読付き英文ジャーナルへの掲載を目指す. 2) 研究分担者の奴田原および山田が中心に分析を行い,財政と中期的景気変動に関わる分析を理論的・実証的な事実を明らかにする.本年度はこれまで得られた結果の頑健性や結果の解釈をまとめる作業を行う. 3) 研究開発が資産価格変動に与える影響の分析ついて研究代表者の稲葉と海外共同研究者の陣内が中心に研究を行う.これまでの研究成果であるJinnai (Economics Letters, 2013),Jinnai (JMCB, 2014),Jinnai (RED, forthcoming)をベースとしてさらに発展させたモデルの開発を行う. 4) 経常収支の非対称性(グローバル・インバランス)の要因分析:本研究では研究分担者の宮澤・山田を中核に,1980年代以降に継続している日本の経常黒字,また世界的な経常収支の非対称性(グローバル・インバランス)の要因を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初より研究計画として準備していた海外共同研究者の日本への招聘費用について,招聘期間内の予定変更が数日間生じたため,当初予定よりも滞在費用が少なくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
「次年度使用額」については,海外共同研究者との研究を密に進めるため,および科研費に伴う研究実績を広く社会に広めるために活用をする予定である.27年度交付額の使用計画として,これまでの研究成果を国内外に報告して意見交換を求めるために,海外学会・国内外の大学でのセミナーおよび研究者の招へいを引き続き行う.また,得られた理論的な研究成果について定性的・定量的評価をするため,シミュレーション分析・実証分析を続けるためのデータ・ソフトウェア・コンピューターなどの環境の更新に利用する.
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