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医療・介護保険財政モデルにおける研究では，前年度までの研究から以下の改良をおこなった。要素価格を内生化し，積立金規模の増加にともなう運用困難を把握できるようにした。世代間の負担格差を生じさせない政策に焦点を当てる根拠として，技術進歩があるもとで世代間の所得再分配をおこなわないことが望ましい条件を特定化した。保険料平準化方式に属する財政方式のなかで終期をスライドさせる保険料平準化方式が負担平準化を図る政策に近い帰結をもつ結果を用い，終期スライド方式の制度設計の考察を深めた。
福井県での国保・介護保険レセプトデータと特定健診データを接合した総合パネルデータを用いた研究では，通所リハサービスの提供体制の整備が65歳以上の要介護の住民の健康度に与える影響に関する分析について，前年度の研究から対照群の設定を改善し，通所リハサービス以外の提供事業所の有無が処置群と同じにするように定式化の見直しをおこなった。分析の結果，女性に関して，要介護度が軽くなる効果が見られた。分析は論文にまとめ，学会発表した。
今年度の新しい研究として，児童の医療費に対する助成制度が医療サービス利用に与える影響を分析し，その結果をまとめ，学会発表をおこなった。福井県下の児童の医療費助成制度は市町ごとに導入時期や対象者，給付内容やその他の制限が異なるため，その地域的・時間的な差異を自然実験として因果効果の推定に利用している。分析の結果，以下のことが示された。適用者の医療費・受診率・日数は，非適用者のそれらに比べて有意に大きい。また，入院外および調剤の一部で確認され，入院・歯科では確認されない。そして，医療費助成とともに設けられている自己負担の存在が，入院外の医療費を有意に減少させることが確認された。
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