本年度は、昨年度までの研究を受けて、第1は、ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)のベンチャーキャピタル投資に関する包括的なデータベースを基にして、日本のベンチャーキャピタル投資の特徴について分析を深めることができた。とりわけ、最近普及しつつある優先株を利用したベンチャーキャピタル投資について、優先株の利用状況と、利用の決定要因を考察した。第2は、IPO市場を対象として、ジャスダックで導入されていた入札方式とマーケットメイキング方式の選択方式という制度が、新興市場の価格形成に及ぼす影響を考察した。入札方式からマーケットメイキング方式に移行した企業、逆にマーケットメイキング方式から入札方式に移行した企業の流動性がどのように変化したかを考察した。第3は、日本の新規公開企業へはアーリーステージのベンチャー企業だけではなく、会社設立から数十年を経た成熟企業も多数公開している。ファミリービジネスと非ファミリービジネスの株式公開目的の違い、株式公開時の資金調達の特徴、株式公開後のパフォーマンスなどを実証的に分析し、日本のIPO市場における課題を考察することができた。1997年のアジア金融危機と2008年のリーマンショックに対して、ファミリービジネスと非ファミリービジネスがどのような対応を行ったかについても考察した。
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