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2014 年度 実績報告書

熟練と職業世界:組織、市場、能力をめぐる総合的歴史研究

研究課題

研究課題/領域番号 24330107
研究機関東京大学

研究代表者

小野塚 知二  東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40194609)

研究分担者 関口 定一  中央大学, 商学部, 教授 (20138613)
清水 克洋  中央大学, 商学部, 教授 (40178968)
ウー ジョンウォン  埼玉大学, 経済学部, 教授 (50312913)
木下 順  國學院大學, 経済学部, 教授 (60146743)
松田 紀子  静岡大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80432201)
市原 博  獨協大学, 経済学部, 教授 (30168322)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード熟練 / 職業世界 / 能力の可測性 / 熟練の危機 / 能力の個人差 / 能力の社会性 / 現場力 / 学歴
研究実績の概要

「熟練」概念を再構成するために、①戦後日本の工業高校卒業者の職務経験と能力開発の関係(市原博)、②女性の家事労働に注目して企業内の労務管理にとどまらない社会的な能力観(榎一江)、③20世紀前半のアメリカにおけるホワイトカラーの雇用・人事・仕事・報酬の関係(関口定一)、④20世紀前半フランスの書籍労連機関紙(La Typography Francaise)や、関連文書(Les Archives de l’InprimarieおよびLe Reveil Typographique)に表れる「熟練」に関する言説分析(清水克洋)、⑤日本的雇用システムにおける「現場力」(現場において改善のできる力)観の変遷(禹宗ウォン)、⑥19世紀アメリカ北東部職人の日常生活と労働に関する社会意識の分析(木下順)、⑦フランスの職業教育・技術教育機関および技術者層の「能力形成」観(松田紀子)、⑧20世紀初頭イギリスにおける技師(engineer)の再定義過程における能力観の変容(小野塚知二)を、それぞれ跡付けて、当事者たちの間で「熟練」という共有された認識が成立する条件を探った。
その結果、第1に、能力としての「熟練」を直接的に表現する言説は例外的にしか析出しえず、「熟練」は多くの事例において学歴・職業経験・資格などの代理指標を通じて表現されていることが解明され、第2に、能力の個人差や、従来は当然視されてきた能力養成の危機などという点では、能力としての「熟練」は当事者たちの間で確実に共有されていたとの仮説に到達した。したがって、第3に、この共有された暗黙知としての「熟練」概念を再構成するためには、能力の差や危機という現象が、当事者たちによって代理指標との関係でいかに言説化されていたかを明らかにすることが有効であるとの見通しを得て、今後の研究にその観点を活かすこととした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

年度当初の計画にしたがって、①「熟練」概念を再構成するための事例研究を研究分担者・連携研究者が推進し、②各事例の当事者(職人、職長、技師、経営者など)の間で、それぞれの「熟練」概念が共有されている条件を可能な限り客観化・標準化して、事例間の比較対照の可能性を確保した。そのうえで、③経済学、経営学、教育学、社会学、および職業教育の実践などの関連分野での「熟練」観へフィードバックすべき論点を、上述「研究実績の概要」欄に記載されたとおりに確定して、2015年度以降の研究を推進するのに必要な作業はほぼ計画通りに完了した、

今後の研究の推進方策

当事者間で共有された熟練や能力の観念を成立させてきた条件を、より簡明に析出するとともに、国、業種・職種、性・年齢、時代などが異なる場合に、熟練観を共有できない原因がどこにあるのかにも論及しながら、今期(2012-2015年度)の研究の取り纏めの方向性を確定するとともに、学会等でシンポジウムを開催して、関連分野の研究者より評価・助言・批判を受け、最終的な成果取り纏めの参考に資することとする。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (6件) (うち謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] アメリカ「ホワイトカラー」雇用史研究序説2015

    • 著者名/発表者名
      関口定一
    • 雑誌名

      企業研究(中央大学企業研究所)

      巻: 26 ページ: 42-69

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 井上友一研究序説2015

    • 著者名/発表者名
      木下順
    • 雑誌名

      経済学雑誌

      巻: 115 ページ: 1~25

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A.クフェル考序説2015

    • 著者名/発表者名
      清水克洋
    • 雑誌名

      商学論纂

      巻: 57 ページ: 掲載決定

  • [雑誌論文] 技術者の「現場主義」と「現場型技術者2014

    • 著者名/発表者名
      市原博
    • 雑誌名

      電気計算

      巻: 82 ページ: 81~83

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 戦後における賞与の制度化プロセス―生活対応の論理と業績対応の論理―2014

    • 著者名/発表者名
      禹宗ウォン
    • 雑誌名

      社会科学論集

      巻: 143 ページ: 107~125

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] フランスにおける教育と産業・労働市場の連携の構築2014

    • 著者名/発表者名
      松田紀子
    • 雑誌名

      歴史と経済

      巻: 223 ページ: 34~36

    • 査読あり
  • [学会発表] Can the Industrial Relations in Japan be Reconstructed in the Long-Term Perspective?2014

    • 著者名/発表者名
      禹宗ウォン
    • 学会等名
      XVIII ISA World Congress of Sociology
    • 発表場所
      パシフィコ横浜コンファレンス・センター(神奈川県、横浜市)
    • 年月日
      2014-07-16
    • 招待講演
  • [学会発表] Korean Miners in Japanese Coalmines During World war Ⅱ2014

    • 著者名/発表者名
      市原博
    • 学会等名
      10th International Mining History Congress
    • 発表場所
      Charters Towers City, Australia
    • 年月日
      2014-07-09
    • 招待講演
  • [図書] 経営史学の50年2015

    • 著者名/発表者名
      市原博、沢井実、中村尚史、榎一江、大島久幸、奈倉文二
    • 総ページ数
      412
    • 出版者
      日本経済評論社
  • [図書] 現場主義の国際比較 ―英独米日におけるエンジニアの形成―2015

    • 著者名/発表者名
      小野塚知二、木下順、関口定一、市原博、谷口明丈、田中洋子、石塚史樹、中村尚史
    • 総ページ数
      269
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [図書] 現場力の再構築へ―発言と効率の視点から―2014

    • 著者名/発表者名
      禹宗ウォン、鬼丸朋子、金井郁、土屋直樹、梅崎修
    • 総ページ数
      290
    • 出版者
      日本経済評論社
  • [図書] The Development of Human Resource Management Across Nations: Unity and Diversity2014

    • 著者名/発表者名
      Kaufman, Bruce E., Woo, Jong-Won
    • 総ページ数
      508
    • 出版者
      Edward Elgar
  • [図書] 地域雇用政策の海外事例研究(韓国語)2014

    • 著者名/発表者名
      尹ユンギュ、鄭ソングク、盧ヨンジン、黄ジュンウク、禹宗ウォン
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      韓国労働研究院

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公開日: 2016-06-01  

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