研究課題/領域番号 |
24330109
|
研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
杉原 薫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60117950)
|
研究分担者 |
久保 亨 信州大学, 人文学部, 教授 (10143520)
岡崎 哲二 東京大学, 経済学研究科, 教授 (90183029)
籠谷 直人 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (70185734)
石川 登 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (50273503)
小堀 聡 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90456583)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 環境経済史 / エネルギー / アジア / 貿易 / 発展経路 |
研究概要 |
平成26年度は、25年度に行った生存基盤論のレビューから、経済史研究および地球環境の持続性に関する研究に重点を移し、他のプロジェクトとの連携によって計9回の研究会や国際ワークショップを開催した。主なものは次のとおり。①8月にRoy bin Wong (UCLA) を招いてセミナーを行うとともに、勤勉革命についての論文 “Industrious Revolutions in Early Modern World History” を共同執筆した(Cambridge World History に収録の予定)。②2013年初めに刊行されたAustin and Sugihara eds, Labour-intensive Industrialziation in Global History (Routledge) の書評会を、多くの執筆者の参加を得て2回にわたって開催し、有益なコメントを得た。③11月にTirthankar Roy (LSE)氏を招いてセミナーを行い、植民地期インドで20世紀初頭以降、しだいに遠隔地貿易利害が衰退し、国内市場を仕切る商人利害が台頭したこと、それが独立後のインド経済に与えた影響を議論した。④2014年1月には、日本学術会議主催の学術フォーラム 「アジアの経済発展と地球環境の将来」を組織し、本研究の構想と成果の一部を中間報告した。⑤3月に「長期の19世紀」における東南アジア、中国、世界経済に関するワークショップを開催し、アジアにおける地域交易比率の推計から、アジアの長期経済発展径路の存在と、植民地期をくぐりぬける径路の連続性を検証しようとした。④以外はいずれも、アジアの長期経済発展径路の存在を、環境史的基盤を意識しながら検証する経済史的研究である。 杉原研究室では、引き続き貿易統計の入力を行った。平成27年度は、戦後アジアの資源基盤の分析をまとめたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)研究会などをつうじて研究分担者との問題意識の共有が進んだ(ただし、結果的に戦後研究に集中できなかった)。とくに労働集約型工業化論と、資源・エネルギー節約への動機との関係が従来よりも明確になった。また、この問題への接近にとって貿易・交易統計がどのように使えるかについても、ある程度の展望が得られた。(2)研究代表者の研究室でのデータ入力が進んだ。現在のところ、依然として貿易統計の入力が基本であるが、他の経済統計との照合も進めている。(3)日本学術会議におけるフューチャー・アース(地球環境の持続性をめぐる国際的な取り組み)への取り組みに、研究代表者が関与を深めることになり、多くの国際会議や理系研究者との対話の場を得た。それにより、地球環境の持続性にとってのアジアの経済発展の意義という問題設定がクリアになった。 以上から、当初の計画とはいささか異なる活動にはなったが、全体としては、戦後アジア環境経済史の枠組みを作るという研究の最終目的に向かって、おおむね順調に進んでいると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
一方で、フューチャー・アースでの議論から分析枠組みについての認識が深まり、他方でデータ入力が進んだが、肝心の戦後アジアの環境経済史研究そのものの枠組みがなお明確でない。平成26年度は、引き続き、国内研究会をできるだけ定期的に行うとともに、日本学術会議や, 国際イニシアティブであるFuture Earthの活動との関連で、本研究の成果の一部を発表する。と同時に、資料の収集、加工を継続する。資料調査については、少なくとも2名が海外で調査、資料収集を行う。また、9月には杉原、小堀がジュネーヴでの国際会議に出席し、本テーマについての報告を行う。杉原は、Cambridge History of the World (Cambridge University Press)に収録される予定の、「工業化の世界史的普及とその地球環境の持続性にとっての意義」について執筆を進める。メンバー全員が、何らかのかたちで中間的成果を発表する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
杉原研究室で作業していただいているアシスタントの経費が抑えられたため、資金に余裕が出来たので繰越可能な本研究費の一部を繰越した。ただし本研究そのものが滞ったわけではない。 平成26年度も調査、データ入力、データの加工などの作業量はさらに多くなるので、その充実のために使用したい。海外出張や研究会の開催も予定を上回る活動量になる可能性が大きいので、研究費を使いきることに問題はないと思われる。
|