研究課題/領域番号 |
24330113
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
木下 幸雄 岩手大学, 農学部, 准教授 (90323477)
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研究分担者 |
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60292786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業経営 / 人的資源管理 / 農業教育 / 能力開発 / リカレント教育 / オーストラリア |
研究概要 |
第1に良質な人的経営資源の迅速で確実な確保のあり方について検討した。前年度までに構築を試みてきた農業経営能力開発の基礎理論にもとづき、経営者能力向上に影響を与える知識要因・経験要因をモデル化し、農業経営者向けのリカレント教育(いわてアグリフロンティアスクール)における経営能力開発の成果を実証した。また、人的経営資源の投資戦略・能力開発モデルの国際比較として、アジア諸国型に位置づけた韓国の経営者教育システム(韓国ベンチャー農業大学)のベンチマーキングを実施した。 第2に長期的人材確保をもたらす農業経営のビジョンや経営戦略に着目するとともに、人材の機能・役割に応じた人的経営資源の特徴を調査した。人的経営資源の投資戦略・能力開発モデルの国際比較として、新大陸諸国型に位置づけたオーストラリアの大規模稲作農場を対象にアンケート調査を実施し、1.経営者能力の全般的な高さ、2.ビジネス志向の経営目的、3.ビジネスと知識集約的産業としての農業経営感覚、4.生産技術のイノベーションと組織管理のイノベーションの2類型、5.農業生産強化と農外投資機会(兼業)創出の経営戦略、6.自然・資源活用の生産管理、7.農産物の安全・信頼を重視するマーケティング管理,8.十全な財務・会計管理、といった特徴が明らかとなった。これは、日本の農業経営者能力や経営管理より全般的に優れた結果を意味するが、日本が基本戦略として重視しつつある効率的で創造的なマネジメントができる農業経営者能力開発については方向性として示された。 第3に各人の役割や特性に応じたマネジメント手法、特に潜在的な能力を最大限に引き出す経営教育システムとキャリア・パスといった能力開発の実態についても調査した。具体的には、農業高等学校(東海地域および東北地域)における農業経営のプロジェクト教育が、能力開発の戦略投資としていかに有効性を持つかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
農業経営能力開発の基礎理論と実践記録については、学術論文(2報)として公知化する見込みが立っている。また、ほぼ計画通りに、オーストラリアでのアンケート調査データを用いて、経営成長条件に関する日本との二国間比較研究を行った。今年度に着手が予定されていた欧米農業における農業経営能力開発に関する調査は、適切な事例選定に時間を要したため、次年度に持ち越す予定である。ただし、人的経営資源への投資戦略と農業人材市場との関係に関する理論的検討は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
日豪の二国間比較研究の成果は、学術論文として早急に公知化する努力をする。さらに国際比較研究を展開するために、米国・カリフォルニア稲作農場など欧米における農業経営能力開発に関する実態調査に着手する。すべての調査結果を活用して、人的経営資源への投資戦略に関する多国間比較研究を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
欧米調査が次年度に持ち越されたため、研究代表者に配分された海外旅費が40万円程度残った。また、研究分担者が担当していた海外動向把握の研究は終わり、20万円程度残った。 米国・カリフォルニアなど欧米調査実施のための海外旅費がかかる計画である。
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