研究課題/領域番号 |
24330114
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大野 忠士 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10527930)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経営財務 / 流動性 / 信用リスク |
研究概要 |
1.はじめに 本研究は流動性指標と大型倒産の時系列データを用いてフィナンシャルストレス(流動性危機確率)の予測を行おうとするものである。 2.実証データとモデル 2002年から2001年までの週別の大型上場企業倒産(倒産/非倒産の2値データ)を目的変数とし、市場流動性にかかる23の指標(S&P500株価、ボラティリティ指標VIX、各種金利スプレッド、レポ取引残高等)を説明変数候補として2項ロジットモデルを構築した(データは米国上場企業データ)。その結果、社債担保のレポ残高(買戻し条件付き債券担保借入残高)を説明変数とするモデルの説明力が一番高くなった。これは流動性危機時には信用力の高い米国債が担保として好まれ、社債担保のレポが忌避される傾向にあるためと考えられる。すなわち金融危機状況下では「市場心理」が変化し金融機関が「危機からの逃避」を図るためレポ取引の中でも限界的な社債担保レポ残高が急減するのである。従来、各種金利スプレッド、株価等が金融マーケットのストレスを測る指標として利用されているが、レポ取引が流動性危機、金融ストレスを図る尺度として有効であることを指摘する研究はなく本研究が初めてのものである。 3.流動性危機確率推移と倒産企業数の相関 本モデルで予測した流動性危機確率と上場企業倒産数との相関係数は0.938と極めて高く、本モデルは倒産企業数を予測するツールとしても用いることができる。 4.今後の展望 より多くの説明変数を用いかつラグ(時間差)を考慮した多変量ベクトルによるモデルの精緻化が今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
与信判断に影響を与える要因の解明が研究の最終目的であるが、重要な説明変数を発見したことで研究の主要な部分が解明できたことになる。研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
倒産・非倒産の2値を目的変数とし、金融経済指標のラグ付きデータを説明変数とする2項ロジットモデルを構築し、流動性危機確率モデルの精緻化を図る。さらに倒産企業の信用リスク値の時系列推移を説明するモデルの構築を模索する。 予定していた海外出張が次年度に繰り越したため平成24年度の直接経費使用額が予定を下回ったもの。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は海外研究者・実務家との意見交換、海外学会での発表を行ったうえ、データ更新費等も必要なため助成金は繰り越し分も含め全額が必要となる見込み。
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