研究課題/領域番号 |
24330114
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大野 忠士 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10527930)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流動性 / 信用リスク / 経営財務 / 金融 |
研究概要 |
1.はじめに: 本研究の目的は米国大型倒産事象をダミー目的変数とし、流動性に関する金融経済指標を説明変数として、倒産を引き起こすような流動性危機確率を予測するモデルを構築することにある。モデル構築に当たっては2002年-2006年データをモデル構築に用い、2007年ー2010年データを併わせて検証用として用いた。説明変数候補は、金利スプレッド、マーケットボラティリティ指標等18種類。被説明変数は大型倒産発生をダミー変数とする週次データ(倒産=1、非倒産=0)。 2.総当たり最適モデル: 倒産の全体構造を把握するため18説明変数について+24から-24までのラグを付し、総当たりで最適組み合わせを探索したところ、社債担保レポ取引残高(ラグ8)と株式市場クラッシュ(ラグ1)を説明変数とするモデルが構築された。 3. 実用モデル: 実務上、予測モデルとしては1カ月以上の余裕(ラグ4以上)が望ましいので、説明変数にラグ3以上という制約をかけてモデルを構築したところ、社債スプレッド(ラグ24)と株式市場クラッシュ(ラグ12)を説明変数とする実用モデルが最適となった(AUC=0.723)。 4.実用モデルと倒産企業数の相関: 実用モデルによる流動性危機確率は米国上場企業全倒産数との相関が高く(相関係数=0.836)、上場企業の倒産トレンドを予測するツールとして用いうることが判明した。また、倒産数予測モデルとして見た場合、米国クリーブランド連銀が発表するフィナンシャル・ストレス・インデックス(CFSI)よりも予測精度は高い結果となった。 5.今後の展望 本モデルは金融機関、金融監督機関の信用リスク管理、金融システム早期警戒システムの精緻化に資するモデルである。今後は米国以外の市場(日本など)でのモデル化を課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動性危機を予測する主要説明変数(ラグ付き)を発見したことで研究の主要部分が解明できた。研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は米国市場ではなく、日本の金融市場を対象に同様の流動性危機確率予測モデル構築を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた海外出張が次年度に繰り越したため平成25年度の直接経費使用額が予定を下回ったもの。平成26年度は海外研究者・実務家との意見交換、海外学会での発表を行ったうえ、データ更新費等も必要な為、助成金は繰り越し分も含め全額が必要となる見込み。 26年度は海外研究者・実務家との意見交換を行ったうえ、データ更新等も必要なため、助成金は繰り越し分も含め全額が必要となる見込み。
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